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September 20, 2006

シシュポスの神話とカミュ

シシュポスの神話

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コリントスの創始者であり王でもあったシシュポスは、非常に聡明で慎重でありながら同時に狡猾で悪知恵をめぐらす人物として知られている。神を嘲笑い、反逆し、挑みかかった咎(とが)でシシュポスは地獄で恐ろしい刑罰を科せられた。ある山の頂まで大きな岩を転がして運び上げるのだが、山頂に達するとこの岩はいつでもすぐに出発点まで転がり落ちるのである。いつ果てるともしれないこの苦役、およそ成し遂げることのできない無益な労働の繰り返しが、彼に課せられた恐るべき刑罰だった。
それでは、シシュポスの咎とは何か?川の神アソポスの娘がゼウスに誘拐されたのをシシュポスは見ていたのだが、娘の身の上を心配したアソポスが情報提供を依頼したのに対して、コリントスに新鮮な泉を湧き出させてくれるならば秘密を明かそうとシシュポスは答える。すぐにアソポスは同意してペイレネの泉が湧き出た。泉と引き換えに秘密が暴露されたことを知ったゼウスは怒り、死の神タナトスをシシュポスのもとに遣わしたが、シシュポスはタナトスをだまして縛り上げて捕虜にしてしまう。そのために人間が死ななくなり、困った冥府の神プルートンは戦争の神アレスを派遣してようやく死の神を解放したと言う。
また、シシュポスは一度死んで地獄に落ちた後も神を恐れぬはかりごとを行う。遺言で亡骸を埋葬しないように命じ、その通りに実行した妻を罰するために戻らなければならないと偽って冥府の神をだまし、まんまと再度の生を得るのである。いったん地上に戻ると、早く地獄の闇に戻れと命ずる召還命令や警告を彼は無視しつづけて、首尾よく長寿を全うすることができた。定めに逆らうシシュポスに神々は大いに困惑し、ついにヘルメスを遣わして彼を地獄に引き戻す。こうして地獄でシシュポスを待っていたのが上の刑罰だったのである。休みなくひたすら岩を転がし転がし、山頂に持ち上げた途端に最初の状態へとリセットされる、いつになっても成就することのない仕事。くる日もくる日も岩と戦い、全身全霊を傾けて取り組む単調な繰り返しが永遠に続くことが分かっている宿命。
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不条理の作家カミュがこのシシュポスについて述べているエッセーがある。シシュポスの受けた刑罰を人間の生そのものとみなすカミュの中にいささかのペシミズムもない。自分を苦しめる岩と全力で取り組み、自らの責苦を凝視するシシュポスこそ、神に逆らい、「死」以外の宿命には従わず、運命に対して雄々しく立ち向かえることを知ったのだ、とカミュは述べる。「ひとはいつも、繰り返し繰り返し、自分の重荷を見出す。しかしシシュポスは神々を否定し、岩を持ち上げるより高次の忠実さをひとに教える。・・・頂上をめがける闘争ただそれだけで、人間の心を充たすのに充分たりるのだ。いまや、シシュポスは幸福なのだと想わねばならぬ。」(「シシュポスの神話」『カミュ全集2』新潮社)

投稿者 akiuchi : September 20, 2006 10:36 AM