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November 10, 2006

ぜい弱、産科救急--末原則幸さん

大阪府立母子保健総合医療センター産科部長・末原則幸先生が奈良県大淀町立病院でおきた事故に関して産科救急システムについてインタビューを受けている。大阪はまだましといわれているのだが・・・
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迫:核心インタビュー ぜい弱、産科救急--末原則幸さん - 毎日新聞 (2435文字)
 2006年11月8日(水)

 ◇高リスクの出産増、母親の命もっと大事に--大阪府立母子保健総合医療センター産科部長・末原則幸さん(60)
 奈良県大淀町立大淀病院で今年8月8日未明、意識不明になった妊婦の搬送先がすぐに見つからず、大阪府の病院で死亡した問題は、産科救急システムのぜい弱さを見せつけた。受け入れられなかった19病院のうち17病院は大阪府にあり、大都市でも同じことが起こる可能性を示した。安心してお産はできないのか。大阪府の産科救急ネットワークの中核を担う府立母子保健総合医療センターの末原則幸・診療局長兼産科部長に聞いた。【科学環境部・根本毅】
 ――大阪府の産科救急システムはどうなっていますか。
 ◆府内では年間8万件の出産があり、約200の出産施設が支えている。多くは異常なく妊娠、出産が進むが、妊娠中の出血や切迫早産、前置(ぜんち)胎盤、難産、産後の出血など、地域の病院では対応しきれない場合もある。緊急事態の時に、高次病院で24時間受け入れられるように大阪産婦人科医会が87年、「産婦人科診療相互援助システム」(OGCS)を発足させた。最初はボランティアだったが、現在は府医師会のバックアップや府と大阪市の補助金を受けている。緊急手術ができるなどの条件を満たす43病院が参加し、システム整備や周産期医療の調査、医師研修などをしている。
 地域の出産施設で妊婦の搬送が必要になると、まず近くのOGCS参加施設に依頼が来る。そこで受け入れ不可能な場合、インターネットの空床情報を参考に受け入れ病院を探す。最近では、年間1500件の緊急搬送がある。全国でも先進的なシステムだ。
 ――大淀病院のケースでは、空床情報を利用してもなかなか搬送先が見つかりませんでした。
 ◆空床情報は1日1回をめどに更新するため、その後満床になることもある。ベッドが空いていても、医師が分〓(ぶんべん)中や手術中で対応できないこともある。最近は、私の施設でも搬送依頼を受けて他病院を探すケースが増えており、実感として空床が減っている。
 ――産婦人科医不足が影響していますか。
 ◆関連していると思う。産婦人科、新生児集中治療室、小児科、麻酔科の医師不足で、周産期医療を担う病院が段々少なくなっている。産科は忙しく、刑事や民事で訴えられることもあり、大学を卒業したばかりの医師に夢を与えられなくなっている。労働条件が改善され、忙しいところは忙しいなりに給料が出るようにして、多くの医師が知恵を出し合って妊産婦を助けるようにすれば、働きがいが出てくる。今は、各施設が少ない人数で頑張り、燃え尽きてしまっている。
 さらに、「危険な出産」を避ける傾向がある。福島県で前置胎盤の妊婦が帝王切開中の大量出血で死亡し、医師が刑事責任を問われた事件を受け、以前、帝王切開したことのある妊婦や、前置胎盤の妊婦を紹介してくる施設が増えた。また、不妊治療に伴う多胎(双子や三つ子など)や高齢の妊婦が増え、リスクのある出産が増えている。リスクの高い出産を高次病院に依頼するのは本来の姿だが、危険が少しでもあればすぐ送るようになっている。市民病院のような地域の中核病院が十分に受け入れないため、基幹病院の総合周産期母子医療センターにハイリスク症例が集中する。そのため受け入れられない事態に陥る。
 ――このままでは安心してお産できませんね。
 ◆今後、地域の基幹病院や中核病院を中心に、どう再編するかが大きな課題だ。システムがうまく機能するために、比較的危険性が低い妊婦は地域の中核病院で受け入れてもらう。もっと軽い妊婦は、地域の第一線の産科医に頑張ってもらう。救急時には高次施設がきちんと受けるという保証がないといけない。
 ――今回は主に大阪で転送先を探しました。
 ◆大阪の方が病院が探しやすいという状況がある。現在、個々の症例で奈良からの受け入れ依頼を断ることはないが、大阪のネットワークの中に奈良が入るとなると、大阪の人の行き先がなくなってしまう。奈良でもネットワークを整備してもらえれば、将来は大阪と奈良で連携できる。
 ――日本は、新生児死亡率は世界一低いが、妊産婦死亡率はそうではありません。
 ◆総合周産期母子医療センターは、妊娠固有の病気や早産、赤ちゃんの異常への対応を中心に整備している。我々の努力不足だったのだが、母親の命をもっと大事にしないといけない。産婦人科だけですべて救うのは無理。脳神経外科や麻酔科、救命救急センターなどと連携する必要がある。
 ――安心してお産をするために、妊婦にも気をつける点はありますか。
 ◆患者は賢くならないといけない。特に妊婦は、出産まで10カ月もあるのだから、危険な状態になった時のことについて医師ともっと話をして出産場所を選ぶのがいい。病院に産科医が何人いて、緊急の場合にはどうなるのか。どんな手術ができて、どんな場合に他に送るのか。情報公開が少ない原因は病院側にあるが、妊婦自身の働きかけで変わると思う。
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 ◇総合周産期母子医療センター
 緊急かつ高度な治療を必要とする母子に対応するための医療機関。国が04年に定めた「子ども・子育て応援プラン」で、同センターを中心とした周産期医療ネットワークを08年3月までに整備するよう、全都道府県に求めた。母体・胎児の集中治療管理室(MFICU)6床以上、新生児集中治療室(NICU)9床以上が国の方針だが、奈良県のほか、秋田、山形、岐阜、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島の7県が現在も未整備。
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 ■人物略歴
 ◇すえはら・のりゆき
 1946年、大阪府生まれ。大阪大医学部卒。大阪府衛生部、阪大助手を経て、87年大阪府立母子保健総合医療センター産科部長。今年4月から同センター診療局長兼務。OGCS運営委員長。

[毎日新聞 ]


投稿者 akiuchi : November 10, 2006 10:00 PM