« WHO事務局長選挙―尾身氏の選出ならず | メイン | 生誕100年記念―ダリ回顧展 »

November 12, 2006

豊橋の無資格助産行為事件 院長・看護師ら起訴猶予

内診問題に関して名古屋地検が「3人には、違法だという明確な認識がなく、健康被害の危険性も認められない」として起訴猶予と判断したのは当然だと思う。横浜の堀病院事件でも同様の判断が出るか注目したい。
11月14日に医会から「起訴猶予ではなくて不起訴とすべきだ」という声明が出されたので追加しておくことにする。時既に遅しという気がしないでもないがそれにしても本部の反応が悪すぎる

*************

豊橋の無資格助産行為事件 院長・看護師ら起訴猶予/名古屋地検支部 - 読売新聞 (425文字)
 2006年11月11日(土)

 愛知県豊橋市の「竹内産婦人科」で、助産行為を禁止されている看護師らが妊婦の内診などをしていた事件で、保健師助産師看護師法違反(助産師業務の制限)の疑いで書類送検されていた同医院の竹内稔弘院長(67)と、看護師(26)ら計3人について、名古屋地検豊橋支部は10日、起訴猶予にした。
 同地検は「3人には、違法だという明確な認識がなく、健康被害の危険性も認められない」としている。
 院長は2003年11月21日~22日、同県豊川市の菊池美咲さん(29)が同医院で、長男(2)を出産した際、助産師資格のない看護師ら2人に妊婦の産道の状況を調べる内診などをさせたとして書類送検されていた。
 菊池さんは、妊婦への使用が禁止されている薬の投与が原因で長男に障害が残ったとして、竹内院長らに約1億7500万円の損害賠償を求めて名古屋地裁豊橋支部に提訴しており、「ずさんな診療行為で、厳重な処分を求めていたので、納得できない。検察審査会への審査申し立ても検討する」と話した。

[読売新聞 ]

豊橋の事件概要は以下の通り。

1.損賠訴訟:投薬で子に障害、産科院長らを提訴--愛知・豊川の親子 - 毎日新聞 (509文字)
 2006年3月4日(土)

 妊婦への投与が禁じられている薬を使用したため生まれた長男に障害が残ったとして、愛知県豊川市の医師、菊池勤さん(29)と妻(28)、長男(2)が3日、同県豊橋市の病院「竹内産婦人科」の院長らに総額約1億7500万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁豊橋支部に起こした。
 訴えによると、妻は03年11月、同病院で胃かいようなどの治療薬サイトテックを陣痛促進剤として膣内(ちつない)に直接投与され、約16時間後に長男を出産。長男は嘔吐(おうと)をし、翌朝には全身がチアノーゼ状態になるなどしたため、別の病院に搬送されたが、低酸素性脳症による発達障害を負った。
 サイトテックは子宮の収縮を促進する作用もあるが、製造元などは妊婦への投与を「禁忌」としている。両親は「長男はサイトテックによる『過強陣痛』が原因で低酸素状態に陥り、出生後も適切な処置が行われなかった」と主張している。
 同病院の竹内稔弘院長(66)は「サイトテックは外国で(陣痛促進剤として)多数使用例があるが、日本では許可されていない。患者には説明し了解を得ていたが、3日から使用は中止する。(原告には)謝罪して和解できればいいと思う」と話している。【加藤隆寛】

2.無資格助産:看護師に内診させた容疑で、豊橋の産婦人科を捜索--愛知県警 - 毎日新聞 (395文字)
 2006年10月7日(土)

 愛知県豊橋市の竹内産婦人科(竹内稔弘院長)で、医師か助産師にしか認められていない出産時の内診を看護師らにさせていた疑いがあるとして、県警生活経済課と豊橋署が9月27日、保健師助産師看護師法違反(無資格助産)の疑いで同医院などを家宅捜索していたことが7日わかった。
 同署によると、03年11月に同県豊川市の女性(29)が長男(2)を同医院で出産した際、資格のない看護師らが内診をした疑いがあるという。
 長男は低酸素性脳症による発達障害となり、女性は今年3月、出産の際に同医院の処置が不適切だったとして竹内院長らを提訴。さらに女性と夫は9月中旬、同医院を豊橋署に告発した。
 同医院は7日、毎日新聞の取材に対し「取材はお断りします」と答えた。
 厚生労働省は02、04年に、分娩(ぶんべん)第1期(陣痛開始後、子宮口全開まで)に看護師が内診することは認められないとの通知を出している。【宮里良武】

[毎日新聞 ]

3.愛知県産婦人科医会声明(10月30日)
保健師助産師看護師法違反容疑による警察の家宅捜索と書類送検に関する愛知県産婦人科医会の見解
                        

平成18年10月30日

愛知県産婦人科医会

                    会長 成田   收

保健師助産師看護師法違反容疑による警察の家宅捜索と書類送検に関する愛知県産婦人科医会の見解

今、日本では周産期医療の崩壊が進んでいる。
過酷な勤務、医事紛争の多発、産科要員などの減少によって、新しく周産期医療を志す医師が激減しているのがその原因とされる。
このような中で、平成18年9月27日、愛知県豊橋市竹内産婦人科医院に警察官30名による家宅捜査が行われた。
容疑は昭和23年に制定された保助看法と厚生労働省医政局看護課長が平成14年と平成16年に通達した内診問題に関する法令違反という。
過去、数十年、多くの産婦人科医師、助産師、看護師のチーム医療の弛まざる努力によって、日本の周産期死亡率は世界最低水準となり、世界一の周産期医療を国民に提供できるまでに至った。
愛知県産婦人科医会も従前より絶対的な助産師不足、産科医師減少の厳しい状況の中、地域の産科医療の充実を図り、母子の健康と安全を確保するため最大限の努力を払ってきた。
しかし、平成16年に厚生労働省医政局看護課長通達が出され、産科医療機関で通常行われていた医師の指示下での看護師による分娩経過の観察(子宮口の開大度と児頭下降度の測定)が禁じられた。この通達は厚生労働省内で検討委員会等での充分な検討を経ずに出されたものである。その結果分娩をとりやめた産科医療機関が増加し、地域住民に不安と不便をもたらし、今日の周産期医療の危機的な状況になったと考えられる。
保助看法における看護師による分娩の補助行為(内診も含む)の解釈は、厚生労働省内の「医療安全の確保に向けた保助看法等のあり方検討委員会」で、平成17年4月より13回にわたり議論が行われ、看護師等の内診問題については、見直し論と反対論、慎重論の両論併記となり、別途、検討会を設けて更に議論することとなった。
日本は法治国家であり、法令順守に国民は重い責務を負っている。
しかし、その法令が長い間の医療上の慣行(看護師の内診など)と社会的情勢(産科医療の崩壊、助産師の絶対的不足)を考慮し、又、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会などの関係団体との議論を重ね、十分なセーフティネットを構築した上で通知されるべきであると思われる。
このような状況を熟慮せず、看護師の内診行為だけを根拠に、警察の家宅捜査および書類送検を実施したのは、国是とすべき日本の少子化対策に真向から逆行させる責任は重大と考える。
今般、分娩医療機関が激減し、助産師の絶対数が極端に不足、偏在している状況を十分考慮し、看護師の内診問題だけで警察の医療機関への家宅捜査が二度と起きないよう、国民とともに安全なお産を守るために、愛知県産婦人科医会は断固抗議するものである。

4.愛知県医師会声明(11月7日)
愛知県豊橋竹内産婦人科医院への家宅捜索に関する愛知県医師会・愛知県産婦人科医会の見解
平成18年11月7日

                     愛知県医師会会長 妹尾 淑郎

                   愛知県産婦人科医会会長 成田  收

愛知県豊橋竹内産婦人科医院への家宅捜索に関する
愛知県医師会・愛知県産婦人科医会の見解


 横浜の堀病院に続いて,愛知県豊橋市竹内産婦人科医院においても、保健師助産師看護師法(保助看法)違反被疑事件により警察官30名にも及ぶ家宅捜索が行われたことに対し大変な衝撃を覚えた。そこで,愛知県医師会,及び愛知県産婦人科医会において、以下のとおり声明する。

「分娩医療機関が激減し、助産師の絶対数が極端に不足、偏在している状況を十分考慮し、看護師の内診問題に関し,警察の医療機関への家宅捜索などが2度と行われないよう、国民とともに安全なお産を守るために、断固抗議する。」

産科要員(医師,助産師,看護師,及び准看護師)の減少をはじめとする過酷な産科医療の現場を無視したこのような警察権力の介入は、産科医療の崩壊に一層の拍車をかけるものであり,その結果、分娩取扱施設は益々減少し、分娩難民が出現するなどの重大な混乱が待ち受けていることを考えなければならない。

医師法17条では「医師でなければ、医業をしてはならない」と定められており、助産は紛れもなく医業そのものである。医師法17条の例外として,保助看法第3条において、助産師を,「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導をなすことを業とする女子をいう」と定義し,同30条で「助産師でなければ、第3条に規定する業をしてはならない、但し医師法の規定に基づいてなす場合は、この限りではない。」と規定している。さらに,保助看法5条、6条では、看護師、及び准看護師は、「診療の補助」を行うことが認められている。

したがって、助産師には保助看法第3条、第30条により医業の一部である助産行為を行うことが認められているが、医師が行う分娩介助に関しては、看護師及び准看護師が、医師の指示のもとで診療の補助として医師の指示の範囲内で子宮口開大の計測等の補助行為(注)を行うことは可能であると解釈することができる。

保助看法には助産についての定義はなく、また内診の文字すら見当たらないなか、昭和23年に制定されて以来、50年以上の長きにわたり厚生労働省は看護師及び准看護師による内診を診療の補助行為として認め、あるいは黙認し、何事もなくこの法律の下に粛々と産科医療がとり行われてきたという経過がある。その間、大多数の分娩は、自宅分娩から施設分娩で行われるようになり、分娩を担当する医療従事者も産婆(助産師)から医師(産科医)に取って代わったにもかかわらず,保助看法は半世紀以上も抜本的な見直しが行われておらず,時代にそぐわない点が多数存在する。

保助看法を解釈するにあたっては,保助看法制定当時の医療情勢,医療水準と現在の医療情勢,医療水準は著しく異なっており,現代の医療情勢,医療水準に則して行わなければならない。

現代の産科医療においては、医師、助産師、看護師、及び准看護師の相互の協力なくして成り立たない。我が国が,周産期の母体死亡率の低さなど,世界のトップレベルにある産科医療を提供できるようになったのは,超音波診断装置や分娩監視装置をはじめとする種々の機器や検査の導入とともに,産科要員(医師、助産師、看護師、准看護師)の弛まざる努力によるものである。医師個人が,24時間365日妊婦の経過を観察することは不可能である。医師の指示により,助産師,看護師,及び准看護師に経過観察の一部を担当させることは必要不可欠である。日本産婦人科医会は、分娩1期において、医師の指示のもとで看護師、及び准看護師が診療の補助として行う子宮口開大の計測は、保助看法3条に違反しないという解釈論を主張してきた。愛知県医師会,及び愛知県産婦人科医会は,この日本産婦人科医会の見解を支持するものである。

今回の家宅捜索の根拠となった医政局看護課長通知は、当時の厚生労働大臣の決裁がないまま看護課長一個人の法解釈で発せられたものである。しかも産婦人科専門集団である医師会、産婦人科学会、医会には何らの事前協議も行われていない。看護課長通知が発せられた後に、「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」において議案とされ、その「まとめ」においても両論併記とされたことは、看護課長通知の解釈に疑義があることを裏付けるものである。

看護師、及び准看護師による子宮口開大の計測の評価については、複数の解釈論が対立し,確定的な見解が得られていない。前記「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」において検討中であるにもかかわらず,看護課長の解釈に依拠して、一方的な警察権力の介入を行うことは、まったく不当なものと言わざるを得ない。

産科医の減少とともに、看護課長の解釈にのみ依拠して、医療機関に対する捜索差押等の警察権力の介入を行うことは、産科医療の現状を省みることのない不当な対応であり、産科医療に対する抑止効果は大きい。このような事態が続けば、産科医療の崩壊は一層加速し、多くの診療所・私的病院での分娩は困難となり、とくに地方においては半数以上の分娩が立ち行かなくなり、多くの妊婦に無用の不安をあたえることは必至である。この国の国是とする少子化対策とは真っ向から反するものである。

以上より、愛知県医師会,及び愛知県産婦人科医会は,分娩医療機関が激減し、助産師の絶対数が極端に不足、偏在している状況を十分考慮し、看護師の内診問題だけで警察の医療機関への家宅捜索などが2度と起きないよう、国民とともに安全なお産を守るために、断固抗議する。

(注)は「介助」から「子宮口開大の計測等の補助行為」に文章を訂正しました。2006/11/9

 


2006年11月14日
 愛知県豊橋市竹内医師の起訴猶予裁定に対する
 日本産婦人科医会の声明  PDF
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 
愛知県豊橋市竹内医師の起訴猶予裁定に対する
日本産婦人科医会の声明

 平成18年11月10日、名古屋地方検察庁において、竹内稔弘医師に対する保健師助産師看護師法(保助看法)違反被疑事件について、起訴猶予とする裁定が行われた。今回の起訴猶予の裁定は、科刑権を行使しないという点、並びに内診行為(子宮口開大や児頭の下降の計測)そのものについて健康被害の危険性が認められないと指摘している点については、評価に値するものではある。しかし、当会は、本件を起訴猶予とした裁定は誤りであり、不起訴の裁定をすべきであったと考える。

 当会は、医師が行う分娩介助に関して、看護師及び准看護師が、医師の指示のもとで診療の補助(保助看法5条、6条)として子宮口開大の計測や児頭下降度の計測を行うことは、保助看法に違反しないことを主張してきた。
 厚生労働省医政局看護課長は、平成14年11月14日付医政看発第1114001号、及び平成16年9月13日付医政看発第0913002号の各回答において、内診(子宮口の開大、児頭の下降、頚管の熟化の判定)は、保助看法3条に規定する助産であるとの判断を示した。
 そもそも、厚生労働省医政局看護課長の回答は、法規の性質を持つものでなく、看護課長の回答は、下級行政機関を拘束するが、一般国民に対して拘束力を持つものではない。また、裁判基準として用いられるものではない。
 看護課長の回答は、審議会や検討会を経ることなく、あるいは日本医師会、日本産婦人科医会の見解を聴取することなく、発せられたものである。また、分娩医療機関が激減し、助産師の絶対数が極端に不足、偏在している現況を十分に調査することなく、発せられたものである。
 看護課長の回答が発せられた後になって、厚生労働省内に「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等のあり方に関する検討会」が設置され、その検討会で、看護師、及び准看護師による内診の問題が議案とされるにいたった。検討会のとりまとめにおいても、看護師、及び准看護師による内診については、見直し論、反対論、慎重論が併記され、一義的な解釈論は導かれていない。また、「産科における看護師の業務について」は別途、検討することになっている。

 自宅分娩から施設分娩へ、産婆(助産師)から、産科医師へ、と分娩のあり方が変化しているにもかかわらず、保助看法は、昭和23年から平成14年までの54年間見直しが行われず、平成14年改正においても、保健師、助産師、看護師の業務について、抜本的な見直しはなされなかった。保助看法の解釈にあたっては、現代における産科医療のあり方、医療の発展状況、産科医師、助産師、看護師、及び准看護師の技能、教育、充足度等の社会的要請等を踏まえつつ、時代に即して、助産師、看護師及び准看護師の役割や業務内容を検討していくべきである。そして、現代の産科医療は、医師、助産師、看護師、及び准看護師の相互の連携や協力なしには成り立たない。我が国が、周産期死亡率、妊産婦死亡率の低さに見るように、世界のトップレベルにある産科医療を提供できるようになったのは、超音波診断装置や分娩監視装置をはじめとする種々の機器や検査の導入とともに、産科要員(医師、助産師、看護師、及び准看護師)の弛まざる努力によるものである。
 産科医の減少とともに、看護師や准看護師による子宮口の開大や児頭下降の計測が認められないことになれば、産科医療の崩壊は一層加速し、多くの診療所・病院での分娩は困難となり、とくに地方においては半数以上の分娩施設が立ち行かなくなることは明白である。
 国是たる少子化対策の大本を担っている産科医療現場の混乱を一日も早く収束することこそが、国を挙げての少子化対策となるのではないだろうか。
 しかし、今回の起訴猶予の裁定は、不起訴裁定とは異なり、情状次第では未だ起訴される余地を認めることになる。そのため、今回の起訴猶予の裁定は、全国の産科医に対して、依然として抑止的効果を与えることになり、今後分娩取り扱いを断念せざるをえない産科医が続くことが懸念される。
 よって、当会は、本声明により、今回の起訴猶予裁定は不当であり、不起訴裁定を行うべきであったことを指摘するとともに、速やかに「産科における看護師の業務について」の議論が尽くされ、統一的な見解が示されるよう求めるものである。

平成18年11月14日


投稿者 akiuchi : November 12, 2006 05:42 PM