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November 16, 2006

闘論:「孫」を代理出産 根津八紘氏

長野の根津先生が「孫」の代理出産をさせたという記事を保存しておくことにする。善悪はともかく根津先生のひたむきな姿勢には敬服する。
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「孫」代理出産、専門家の反応さまざま

 ■「家族の幸せ」優先を 医師、独断実施は問題
 長野県の「諏訪マタニティークリニック」(長野県下諏訪町)の根津八紘(やひろ)院長が15日、明らかにした「母親が娘に代わって孫を産む代理出産」。「医師個人の判断での実施は問題」との反対論や「子を持つことは家族の幸せ」という賛成論、「実施基準を明確に」とルール作りを求める声など各界の専門家の反応はさまざま。進歩する生殖補助医療に関する国民的議論が高まりそうだ。
 森崇英・京都大名誉教授(生殖医学)は「生殖補助医療問題は必ず『社会的コンセンサスがない』との議論になるが、子供が持てない夫婦の問題については、社会は解決できない。代理出産を禁止したら、家族は子供ができなくて一生不幸を背負う。社会にはこうした家族の問題を決める権利があるのか」と指摘、家族の幸せを優先すべきだと話す。
 不妊治療に長年取り組んできた飯塚理八・慶応大名誉教授(産婦人科学)は「医療技術の進歩と現行法が合わなくなっている。子供をどうしても欲しいと思う患者に頼まれたら、それに応じるのが医師」と断言。まずは学会が代理出産実施に向けたルールづくりを進めるべきだとする。
 「金銭のやり取りの可能性もある。(代理出産については)司法が絡んだチェック機関をつくって判断すべきだ」というのは生命倫理に詳しい米本昌平・科学技術文明研究所長。
 先進国では禁止論が主流になっているという。米本所長は「代理出産は原則として禁止し、例外的に認めるケースについて社会が受け入れられるルールづくりが必要」と強調する。
 漫画家、さかもと未明さんは「子供が欲しいというのは、女性としては分かる」としながらも、「生殖補助医療の問題が起こったとき、手放しで『よかった』と言えないのは、科学が生命に対する尊厳に踏み込んでいることを感じているからではないか」と、生殖補助医療に対する違和感を語った。
 漫画家、弘兼憲史さんは「医師の独断で実施したことは問題だが、代理出産自体は個人的には反対ではない。子供を持つことができた両親はハッピーなのだから」と議論の難しさを指摘した。
 日本産科婦人科学会の荒木勤監事(日本医大学長)は「学会は代理出産を禁止しており、事実関係を確認しなければならない。時代とともに社会の考え方も変わってくる。学会の指針も見直す必要性が出てくるかもしれず向井亜紀さんのケースの最高裁判断に注目している。国が責任を持って法整備などを進めてほしい」。
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 ■根津院長の一問一答「学会で決めたこと 絶対ではない」
 根津八紘院長の記者会見の要旨は以下の通り
 --出産を決めるまでの説明は
 「代理母の夫妻と女性夫妻の4人に3、4回にわたって出産の危険性などを伝えた。致命的なことが起こりうるとも説明した。代理母は『自分は人生を十分に生きてきた。娘のために命を懸けても』と言っていた。(相談から)2、3カ月で実施したと思う」
 --生まれた子が出生の事実を知ったら
 「(30代の)女性には『おばあちゃんのおかげで生まれた』と、子供にその意味がわからない段階でも説明するよう言っているし、両親も了解している。最後は親子の関係で決まる」
 --日本産科婦人科学会は代理出産を否定している
 「学会で決めたことは絶対ではない。学会を離れても医療行為をやっていける。行動しないと変わらない」
 --自分の子供を自分の母親が産む違和感は
 「既成概念から考えれば奇異なことだが、出産をどう捕らえるかだ。子供を産みたい娘の気持ちを親の協力で解決できる。むしろ今後、実の母親による代理出産が定着し『親が子供の子を産まないのは愛がないこと』というような話にならないか心配だ」
 --第三者による代理出産は
 「姉妹間でも意見の食い違いで、関係がぎくしゃくした例がある。他人はさらに難しい。母子にはこうした問題がない」

[産経新聞 ]

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闘論:「孫」を代理出産 根津八紘氏/柘植あづみ氏 - 毎日新聞 2006年10月30日(月)

 長野県の根津八紘医師が公表した、祖母が「代理母」となって孫を出産したケースが論議を呼んでいる。代理出産は最先端の医療技術なのか、生命倫理にふれる危うさを持った治療行為なのか。社会の価値観、個々の人生観なども絡む代理出産問題について、根津医師と生殖医療に詳しい研究者に聞いた。(題字は書家・貞政少登氏)
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 ◇尊い自己犠牲を支援 社会へ問題提起した--産婦人科医・根津八紘氏
 「目の前で困っている人がいたら助けてあげる」というのが、人間社会の基本的なルールで、私が医師になった理由でもある。代理出産を選択する人は、当事者同士でみな真剣に話し合い、決めて病院にやってくる。私が勧めることはない。今回も、母親が「子宮がなくなった娘の代わりに産んであげる」という尊い願いを持ち、その実現を私が手助けしたということだ。
 私は「アウトロー」と言われてきたが、法律は守っている。代理出産を禁じる日本産科婦人科学会の会告(学会規則)は単なる取り決めで、法律ではない。それも産婦人科医だけで決めたもので、患者のニーズなどをとらえ切れていない。
 今回の代理出産では祖母が孫を産んだ形になった。「倫理的に問題がある」という指摘もあるが、社会の中の取り決めとか倫理観というものは、時代によっても変わる。人間社会において、一番大切なのは「相互扶助の精神」だと思う。
 私の病院に来た不妊患者の8割は、本格的な治療を受けずに帰ってもらっている。産むことが目的となってしまい、育てることを忘れているような人もいるからで、そういう人には説得し、あきらめてもらう。
 ただ、私のところに来る患者さんは、最後の望みを託してくる。「ここなら何とかしてくれるのではないか」と。そういう人に「手立てはあるが、学会では禁止されているから、ダメです」とは言えない。最先端の治療で救えるなら、「何とかしてあげたい」という気持ちで、最善を尽くすのが医師の役目だ。
 私は、問題を提起し、社会的合意を得て、世の中をよりよく変えていこうと思っている。1年以上前の代理出産を公表したのは、(代理出産で双子を得たタレントの)向井亜紀さんを応援したいと思ったからだ。今回の患者さんからも「後に続く人たちのために役立ててもらいたい」と、公表を承諾してもらった。支持が得られなければ医師を辞めようと思ったが、幸い、好意的な反応が多いと思う。
 代理出産は命がけの試みで、尊い自己犠牲に基づくものだ。悪用を罰する法律は作ってほしいが、代理出産そのものは認めてほしい。産める人が、産めない人に手を差し伸べることができる体制を作ってほしい。【構成・池乗有衣】
 ◇不妊女性、追い詰める 医療だけでは救えぬ--明治学院大教授・柘植あづみ氏
 まず、不妊の悩みの本質を知ってほしい。彼女たちは、産めないことだけを悩んでいるのではない。
 初対面の人に「お子さんは何人?」と聞かれることが怖くて、外出できなくなった女性がいる。「子ができない自分は価値のない人間」と傷つき、追い詰められている。不妊は医療技術だけで解決できる問題ではなく、社会全体の問題だ。
 だから、根津医師の「代理出産は不妊で苦しむ人を助ける解決策」という言葉に疑問がある。依頼した女性は「産めない女性」というらく印が押されたままだ。やっと子どもができても、「一人っ子ではかわいそう」という新たなプレッシャーを周囲から受ける。不妊女性向けに講演した時、子どもを5人持つ女性が「私も不妊女性の気持ちが分かる」と言った。日本では子どもは1人か2人が普通で、それ以上でも以下でも、好奇の目にさらされる。
 最近の代理出産をめぐる論議が、「お母さんや姉妹に産んでもらえばいい」などと、子どもがいるべきだとの風潮を強めるのではないかと心配している。代理出産を少子化と結びつけるのも疑問だ。不妊女性は「国のために産みたい」と考えているわけではない。
 日本では、子どもに障害があっても、事故にあっても、母親の責任にされがちだ。生体臓器移植も母から子への提供が期待される。娘が出産できない責任まで、母に負わせるのか。母への代理出産の依頼は「断れない状況」を生みやすい。
 商業的代理出産がされている米国では最近、問題が表面化していないようにみえる。だが実際は、出産する女性に保険をかけ、そのパートナーを含め徹底したカウンセリングをする。依頼者、出産者とも弁護士がつく。それだけ問題が生じやすいということを示している。また、代理出産を請け負う女性は貧しい人や移民が中心で、経済格差を利用した制度ともいえる。
 「子どもがいない人」の存在を認め、「子どもがいないと不幸」との価値観を押し付けない社会へと変えていくことが先だと思う。娘から不妊の相談を受けたお母さんたちは、「子どもがいなくても、あなたはかけがえのない存在よ」と娘に言ってほしい。代理出産をしなくても、その励ましこそ、子どもへの愛だから。【構成・永山悦子】
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 ■人物略歴
 ◇ねつ・やひろ
 信州大医卒。同大医学部助手を経て、76年に「諏訪マタニティークリニック」開業。64歳。
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 ■人物略歴
 ◇つげ・あづみ
 お茶の水女子大大学院博士課程修了。03年から現職。医療人類学専攻。46歳。

[毎日新聞 ]

投稿者 akiuchi : November 16, 2006 07:28 AM