« 【お産が変わる?】 | メイン | 安倍内閣メールマガジン(第6号 2006/11/16) »
November 16, 2006
医療事故と医師の刑事責任
産経新聞の社会部長はまともに医療のことを考えているようだ。彼とゆっくりと意見交換をしたという大学病院の関係者の説得によるものだと思われるが今の医療人に必要なのはこのようにマスコミ関係者を敵視せずに味方に引き込むことだろう。
*******
【記者が読む 社会部長 飯塚浩彦】医療事故と医師の刑事責任 産経新聞 2006年10月28日(土)
◆再発防止へ、まず専門家が解明を
1カ月ほど前、ある大学病院の関係者とゆっくり意見交換をする機会があった。そこで問いかけられたのが「マスコミは医療事故をどのような視点で伝えようとしているのでしょうか」ということだった。大学病院で働く医師たちの間では「医師はそれぞれ患者を助けるために頑張っているのだが、最近は『結果責任』を追及される風潮が一段と強まって、現場が萎縮(いしゅく)してしまっている」というのだ。
おりしも、その直後に、徳洲会宇和島病院(愛媛県)を舞台にした臓器売買事件や大淀町立大淀病院(奈良県)の妊婦死亡事故、京都大病院の脳死肺移植患者の死亡事故など、医療をめぐる大きなニュースが相次いだ。
さきの大学病院関係者たちに衝撃を与えたのは、今年2月、福島県立大野病院の産婦人科の医師が逮捕された事件だったという。医師は平成16年12月、帝王切開手術中に胎盤をはがした結果、妊婦を大量出血で死亡させたとして業務上過失致死罪で逮捕、起訴され、新聞やテレビでも報道された。
「いつ何時、急変するかもしれない産科医療の特殊性が理解されていない。24時間休まる暇もない過酷な環境のまま放置され、最悪の結果を迎えたとたん、その医師個人に刑事責任まで押し付けられるというのはいかがなものでしょうか」と大学病院の関係者は首をかしげる。「このままでは、ますます産科の医師のなり手がいなくなり、さらに分娩(ぶんべん)施設が減るという悪循環に陥ってしまいますよ」。
こうした現象は、産科に限らず、小児科や麻酔科でも起きているという。
医療過誤によって、患者が亡くなったり、大きな後遺症が出た場合、医師の責任を追及したいという遺族や家族の気持ちは痛いほどわかる。
かつて医療をめぐるトラブルは民事裁判で解決するというのが主流だった。ところが最近は、遺族らからの訴えで警察が動くというケースも目立つ。
ただ、どこまで医師個人の責任を追及するかは難しい問題だ。海外では、医師が故意に患者を傷つけようとしない限り、原則として刑事責任は問われない国もあるそうだが、日本では、医療現場での刑事責任がどこまで問えるか明確な基準はない。平成11年、保育園児ののどに突き刺さった割りばしが脳まで達していたのを見落とした医療事故では、業務上過失致死罪に問われた杏林大病院の元医師に今年3月、無罪判決が出たように、個々の事例ごとに司法判断に任せているというのが実情だ。
医療現場に警察が介入して、善意の医療が、結果次第で「医師の犯罪」として扱われることは、国民医療のためにプラスになるとは思えない。むしろ、なぜそのような医療事故が起きたのかを医療の専門家が解明し、再発防止に役立てることに力を入れる方が重要ではないだろうか。もちろん、そのためには、医師や病院が情報を正直に開示することが前提だ。
[産経新聞 ]
投稿者 akiuchi : November 16, 2006 07:53 PM