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November 26, 2006

米本昌平 代理母は例外ケース以外禁止に

代理母出産に関して米本昌平氏が産経新聞「正論」に論文を発表している。米本昌平というと私が学生時代のころから生命倫理に関して多くの論文を発表していたことを覚えている。「日本の場合、法律ができるまでには恐ろしく多くのエネルギーを要する。しかも立法の過程でさまざまな政治的妥協が加えられるため、できた法律がうまく機能するものであるかは疑わしい。いずれ法律を作るとしても、そのために必要なのは、この技術に関して医学的および社会的な両面でどのような課題を抱えているかについて、取り組むべき問題の形をバランスよく描ききった「技術評価報告」を作成し、社会として課題認識を共有することである。法律はこれを踏まえて策定されるものである。」法律に関しては医師法、保助看法なども該当すると思うのだが本当に日本の法律はどうして現場から遊離してしまうのだろうと思う。

根津先生の代理母出産に関しては既に以下の日記に記録しているので参照されたい。
http://blog.med-apple.co.jp/mailmaga/diary/archives/2006/11/post_71.html

【正論】科学技術文明研究所所長 米本昌平 代理母は例外ケース以外禁止に 産経新聞 2006年11月25日(土)

 ◆技術評価もとに幅広い議論必要
 ■人体を道具化する恐れ
 治療のために子宮を摘出し、子供を産めなくなった30歳代の女性に代わって、50歳代の母親が妊娠・出産していたことが明らかになった。娘夫婦の卵子と精子で体外受精した卵を用いて母親が妊娠し、遺伝的には孫にあたる子を、昨年出産していたのである。出産後、自らの実子として届けた後、娘夫婦との間で養子縁組を行っている。この点で法的には問題はない。
 この手術を行った長野県の医師は、日本産科婦人科学会の基準は保守的で不妊治療の現場の要請に応えていないという信念の持ち主で、過去に不妊治療の過程で多胎になった場合に胎児を減らす手術を始めた人である。そして、2001年に姉妹間での代理出産を行ったことを明らかにした。これをきっかけに、厚生科学審議会生殖補助医療部会は03年に、代理母は家族関係を複雑にし、人体を道具化する恐れがあるなどの理由で、罰則のある法律で禁止すべきとの報告書をまとめた。その後、産婦人科学会も代理母禁止の学会見解を定めている。
 この種の議論をすると、外国はどうか、という問いが必ず出てくるのだが、ここまで問題が顕在化した以上、日本社会の実情にあった政策を具体化すべき時期にきている。
 ■禁止と容認交じる各国
 実際、世界を展望してみると、代理母問題では先進国の間でも対応は多様である。米国では連邦レベルの規制はなく、この問題は州の権限に委ねられている。米国では1980年代以来、夫の精子を第三者の女性に人工授精して子供を産んでもらう形の「代理母」が相当数行われてきており、商業的な色彩のものも少なくない。これに関してカリフォルニアなどの6州では代理母が認められ、11州では州法で明確に禁止している。
 一方、欧州では今もなおキリスト教的な価値観が浸透しており、生殖技術の使用については概して禁欲的である。たとえばカトリック教徒が多いオーストリアでは、法王庁の教義に近い条文をもつ生殖技術規制法を定めている。またスイスでは、憲法によって生殖技術は節度をもって使用すると定めており、胚の譲渡と代理母は憲法上の禁止条項である。
 ただ英国だけは、商業的な代理母を禁止する一方で、ボランティアによる代理母を認めている。代理母を実施する機関は許可制で、夫婦の卵子と精子を用いて第三者に産んでもらう代理母によっても、年間10人ほど子が生まれている。最近の聞き取り調査では、代理母になる女性は7割が無関係のボランティアで、あとは友人・姉妹・いとこが産んでいる。依頼する側の事情は、繰り返し体外受精を試みても妊娠できない場合と、何かの理由で子宮がない女性のケースがほとんどである。代理母実施の可否については第三者によって構成される倫理委員会が決定するが、依頼夫婦と代理母との間で親密な人間関係を築くことが重要である。以後の関係も概して良好という結果がでている。
 日本の現状の問題点は、患者側の要請に応じて医師個人が、主観的には善意からとはいえ、純医学的な判断だけではなく、価値の問題までも踏み込んで決めてしまっている点である。地方の医師の中には、医師の裁量権は幅広いものと解釈する傾向があるが、ほんらいは医療職能集団がルールを定め、これに従って行われるべきものである。
 ■社会で課題認識共有を
 しかし日本の学会は学術親睦団体であり、強制力をもって学会ルールを守らせる態勢にはない。こうなると法律が必要ということになるのだが、日本の場合、法律ができるまでには恐ろしく多くのエネルギーを要する。しかも立法の過程でさまざまな政治的妥協が加えられるため、できた法律がうまく機能するものであるかは疑わしい。
 いずれ法律を作るとしても、そのために必要なのは、この技術に関して医学的および社会的な両面でどのような課題を抱えているかについて、取り組むべき問題の形をバランスよく描ききった「技術評価報告」を作成し、社会として課題認識を共有することである。法律はこれを踏まえて策定されるものである。
 先回りして私の考えを言えば、代理母に関係する金銭授受や無秩序な拡大を防ぐために原則禁止とし、たとえば家庭裁判所の審判を経た例外的なケースだけを認める程度にとどめるべきだと思う。
 先進国の中で、代理母問題を含む生殖技術一般の規制について、社会や議会が広範な議論をしていないのは日本くらいである。そのためにも、わかりやすい報告書の作成に、まず着手すべきである。
 (よねもと しょうへい)

[産経新聞 ]

米本昌平プロフィール
http://www.academyhills.com/gijiroku/yonemoto/profile.html

科学技術文明研究所を主宰する米本昌平氏は、2005年12月4日に毎日新聞のコラム「時代の風」で以下のような見解を提示しています。
http://www.minusionwater.com/yonemoto.htm

投稿者 akiuchi : November 26, 2006 11:16 PM