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December 27, 2006

日本外科学会声明(福島県立大野病院の医師逮捕・起訴の件)

日本外科学会が声明(福島県立大野病院の医師逮捕・起訴の件)を発表した。


声明


 平成16年12月に福島県の県立病院で腹式帝王切開術を受けた女性が死亡した事例について、本年2月に手術を担当した医師が業務上過失致死および医師法違反の罪で逮捕され、さらに起訴された件に関して、同じく手術を業とする外科医の立場から意見を述べます。
 まず始めに、この件で亡くなられた患者様、及び愛するご家族を亡くされ悲しみの中におられるご遺族に心から哀悼の意を表します。
 この地区の病院唯一の産婦人科医として誠心誠意診療に当たっていた医師に対して、調査委員会が報告書を作成し、県としての処分も終えているにもかかわらず、「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」を理由として逮捕勾留し、より良い医療を行おうとする医師の善意と患者のための自由な医療を踏みにじる検察当局に抗議の意を表します。このことがひいてはリスクの多い外科系臨床科に属する医師の減少をもたらし、また患者のための真の医療から自己防御のための医療へと変化させ、また全国への公平な地域医療の分配をも不可能にさせて、日本の医療の荒廃をもたらしかねない事に我々は警告を発したいと考えます。
 この件で問われた医師法21条による異状死の警察届出をめぐって、医療界、法曹界において混乱が続いています。混乱の第一の原因は、「異状」という言葉の曖昧さにあります。いまだ「異状」について所轄官庁から責任ある回答が見出せない状況で、医療の現場は、死因が明らかに特定できる場合を除き、過失の有無を問わず、疾患そのものによる死亡も合併症による死亡も全て警察に届出なければならないということになってしまいます。そして、全ての届出案件につき警察権力による介入が為されるとすれば、医療現場が医療知識のない警察権力の介入により撹乱され、国民のための真の医療から自己防御のための医療へと医療が荒廃してしまうおそれが多分にあります。
 混乱の第二の原因は、「所轄警察署への届け出」という制度の政策的な不合理性にあります。医療機関における死亡について、解剖を含めた死因解明が適時適切に行われることの必要性については、論を俟たないものですが、現状において、「所轄警察署」には診療経過を的確に評価する機能が整備されているとは言い難く、死因解明のための制度基盤の整備が急務であります。さらに、医師法21条の警察届け出の行われた事案のうち刑事立件されるものは一部にとどまるとはいえ、現実の運用においては、届け出直後から刑事訴追を念頭においた事情聴取が行われるため、医療の透明性をめざして自らの医療行為に関し説明に赴いた医師が、最初から「被疑者」の如く扱われ、かえって過大な負担と苦痛を課するに至っています。警察に届け出後、司法解剖が行われることとなった事例においては、捜査の秘密として司法解剖の結果さえ医療機関にも患者様ご遺族にも知らされず、医療事故再発防止に役立たないだけでなく、医療従事者が何年にもわたって徒に刑事処罰の不安に慄く実情があります。
 この混迷の底流に医療不信があるとするならば、我々は自らの姿勢を医療の原点に立ち戻し、医療が真に患者様の利益になるように医師としてのプロフェッショナリズムの確立に努力したいと考えます。現在我々日本外科学会は外科系関連学会とともに医療の透明性、公正性を求めて、中立的専門機関として厚生労働省の「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を日本内科学会、基盤17学会とともに実施していますが、これをさらに発展させて、国民のために質の高い公正な医療が行われるようになるように努力するものであります。さらに現行の医療の現場に歪みをもたらしている医師法21条を正すべく、努力を続ける所存であります。


平成18年12月19日     


社団法人日本外科学会   
会長 門 田 守 人   

投稿者 akiuchi : December 27, 2006 09:16 PM