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December 31, 2006

フセイン元イラク大統領の死刑執行

2006年を締めくくるニュースとしてサダム・フセイン元イラク大統領の死刑執行が報じられた。アメリカ追従の日本政府としては支持するしかないのだろうが東京裁判などと同様に勝者(アメリカ、シーア派)による判決が今後どのように歴史的に評価されるのか注目したい。いずれにしろ2007年が世界にとって平和な年となることを祈りたい。宗教とは何か?国家とは何か?これから日本国はどうなるのか?来年はもう少し世界の状況にも目を向けたいと思う。「深く地域に根差して広く世界に開く」というアップルのキャッチコピーを考えたころ(=原点)にもう一度戻って来年はやり直したい。

フセイン元大統領の死刑執行・「人道に対する罪」 (日経新聞)
 【バーレーン=加賀谷和樹】イラク政府は30日、イスラム教シーア派住民を虐殺した「人道に対する罪」で死刑が確定していたフセイン元大統領(69)の絞首刑を執行した。国営テレビが伝えた。判決確定からわずか4日だった。ほぼ四半世紀にわたりイラクを恐怖政治で支配してきた独裁者は、自国の法廷で犯罪者として裁かれて生涯を終えた。

 イラクのマリキ首相は求心力を得るために、旧政権を支えたイスラム教スンニ派への元大統領の影響力を排除しようと死刑執行を急いだとみられる。ただ、スンニ派武装勢力の反発で治安がさらに悪化する恐れもある。裁判の公正さに対して、欧州各国や国際人権団体からの批判も広がりそうだ。

 元大統領の絞首刑はバグダッド市内にある政府施設で同日午前6時(日本時間正午)ごろ、執行された。地元メディアによると、執行にはイラク高等法廷の判事や政府当局者、イスラム教聖職者の計7人が立ち会った。国営テレビでは執行直前の元大統領の姿と、処刑後の遺体の顔が映された。 (19:24)

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米「公正な裁き」、欧州は死刑批判 中日新聞
 【ワシントン=久留信一】米政府は29日深夜(日本時間30日午後)、「サダム・フセインは公正な裁きを受けた」とするブッシュ大統領の緊急声明を発表し、フセイン元イラク大統領の死刑執行が正当な司法手続きによるとする立場を強調した。処刑に対する国際的な批判は強まっているが、ブッシュ政権は今後予想されるイラクの治安悪化対策に全力を挙げる構えだ。

 ブッシュ大統領は声明の中で、処刑について「イラクが民主国家に進む上での重要な一里塚」と位置付け、同国が「テロとの戦い」での米国の同盟国として安定することに期待感を表明した。

 裁判の公正さを疑問視し、死刑に反対してきた欧州諸国や国際人権団体などの批判に対しては、「自国民に対する恐るべき犯罪に対する代償」と指摘。処刑が「法によって統治される社会を築こうとするイラク国民の固い決意」で実現したとの立場を強調した。

 一方、処刑によってイラクの治安が一層悪化する懸念も強い。ブッシュ大統領はこれまでに、イスラム教シーア派指導者のハキム師、スンニ派指導者であるハシミ副大統領と会談するなど、イラクの各派指導者に対し政治的和解に向けた協力を求めている。

 さらに、イラクを今月訪問したゲーツ国防長官は現地司令官と協議し、イラクの隣国クウェートに来年1月初め、米軍待機部隊3500人を派遣することを決定した。

 現在、ブッシュ政権はイラク政策修正に向けた大詰めの作業を進めている。「2008年3月までの撤退は可能」とした超党派の「イラク研究グループ」による報告書がたたき台で、当面の治安安定対策として治安部隊の一時的増強と、和解を求める政治的働きかけの両面を打ち出すとみられる。

 ただ、03年3月のイラク開戦以来、駐留米軍の戦死者は3000人近くに達している。

 早期撤退を求める米世論は強まっているが、フセイン元大統領処刑による混乱が長期化すれば、修正政策の作成作業がさらに困難になることも予想される。
 

 【ロンドン=岡安大助】米国とともにイラク戦争に参戦した英国のベケット外相は30日、フセイン元大統領の死刑執行について、人道上の観点から非難する一方で「フセイン元大統領はこれまでの重大犯罪に対し、責任を取らされた。イラクには民主的に選ばれた政府があり、私たちは主権国家の決定を尊重する」との談話を発表した。
 

 【パリ=牧真一郎】イラクのフセイン元大統領の死刑執行を受け、他の欧州諸国とともに死刑廃止を主張しているフランスは30日、「すべてのイラク人が未来を見つめ、国民の和解と統一に向けて努力することを求める」とする外務省声明を発表した。

 声明では「これまで以上にイラクへの全面的な主権回復と国の安定を目指さなければならない」と国際社会の責務を指摘した。

 一方、バチカン法王庁の報道官は同日、「死刑は報復の気持ちを育て、新たな暴力の種をまく危険性がある。正義を構築し、社会を和解させるための手段とはならない」と述べた。
 

 【ベルリン=三浦耕喜】イラクのフセイン元大統領に対する死刑が執行されたことについて、ドイツ外務省は30日、「ドイツ政府は欧州連合(EU)と同じく、基本的にいかなる条件下でも死刑を認めない」との声明を発表し、死刑に反対する立場を強調した。

 同時に、声明では「残忍に国民を圧迫し、罪なき数千の人々が殺され、行方不明になった」として、元大統領への断罪には一定の理解を表明。「信条、宗教にかかわりなく、すべてのイラク社会が結び合うことが決定的に重要となる」として、国民的和解を求めた。

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12月31日付・読売社説(1)
 [フセイン処刑]「憎悪の悪循環をどう断ち切るか」

 政治色が濃い性急な死刑執行ではなかったか。国民融和が求められるイラク再建へ、今後どのような影響を及ぼすか、見極める必要がある。

 「人道に対する罪」で死刑が確定していたイラクの元大統領サダム・フセインに対する絞首刑が執行された。イラク高等法廷の上訴審で、死刑が確定してわずか4日後の執行だった。

 約30年間にわたりイラクを強権支配した元大統領は、イスラム教シーア派やクルド民族に対する苛烈(かれつ)な弾圧政策で、イラクの「安定」を維持してきた。一方、スンニ派国民にとっては、スンニ派権力の象徴とみなされてきた。

 死刑執行は、現在、イラクで激化する宗派抗争をさらにあおりかねない。そのため、処刑のタイミングには、政治的判断の余地もある、との見方もあった。

 だが、シーア派が主導するマリキ政権は、むしろ執行を急いだ。

 治安改善に有効策を打ち出せないまま求心力を失いつつある政権浮揚のため、シーア派やクルド民族の復讐(ふくしゅう)心に訴えようとしたのだろうか。現在の情勢は、フセイン個人の命運とは直接かかわりがないほど深刻化している、との判断も働いたのだろうか。

 マリキ政権にとっては、大きな賭けであるのは間違いないだろう。

 マリキ首相が最優先すべきは、国民和解の道を探ることだ。それなしには、政権維持は難しく、いかなる再建策も絵に描いた餅(もち)となる。

 処刑後、シーア派住民が多い南部の町の市場で爆発事件が発生し、数十人が死傷した。処刑との関連は不明だが、マリキ政権は、スンニ派が元大統領の死を前面に押し出し、攻勢を強めてくることを覚悟しなければなるまい。

 フセイン裁判は、イラク民主主義を試す機会でもあったが、政治指導者が介入するなど、多くの疑義が指摘された。法の支配を無視した元大統領に対し、選挙で選ばれた新生イラクの指導者は、民主的手続きを経た裁判の先例を残す好機を失った、との見方も出ている。

 クルド人虐殺やクウェート侵攻など、フセイン政権による別の犯罪の真相解明が困難になった点も気がかりだ。

 国際社会、とりわけ米国のイラク支援がますます大切だ。

 ブッシュ大統領は、年明けにも新たなイラク政策を明らかにする予定だ。これまでのイラク政策のどこが間違っていたのか、なぜ機能しなかったのか、率直な検討が必要だろう。

 柔軟で効果的な新政策を打ち出し、イラク支援の実を挙げることが重要だ。

(2006年12月31日1時32分 読売新聞)
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イランなど歓迎、欧州には戸惑い フセイン元大統領処刑(朝日新聞)
2006年12月30日23時10分
 イラクのフセイン元大統領処刑の知らせに、旧フセイン政権と敵対した国は歓迎する一方、死刑を廃止している欧州などでは疑問や戸惑いの声が上がった。

 イランのアセフィ外務次官は、国営イラン通信(IRNA)に「処刑は、イラクの人々の勝利だ」と語った。イスラエルのペレス副首相は公共ラジオ放送で「サダム・フセインは自ら死を招いた」と述べた。

 イラク戦争を戦った英国の反応は複雑。ロイター通信によると、ベケット外相は「元大統領の恐ろしい罪の一部を、イラクの法廷が裁いた事実を歓迎する」としつつ、改めて「世界中の死刑廃止を主張する」と述べた。

 フランス外務省は声明でイラク国民に「未来を見すえ、国の再建と統一に努めてほしい」と呼びかけ、「他の欧州諸国とともに死刑廃止を主張するフランスは、30日の処刑を記憶にとどめる。この決断はイラク国民と主権を持つイラク当局によるものだ」とした。

 死刑に原則反対のロシアは、外務省のカムイニン情報新聞局長が「国際社会の呼びかけにイラク政府が応えなかったことは遺憾だ」と語った。パレスチナ自治政府で内閣を握るイスラム過激派ハマスの報道官は「フセイン氏は戦争捕虜。処刑は国際法に違反する」とした。

 中国外務省の秦剛・副報道局長は「イラクの問題はイラク国民の決定によるべきだ」との声明を発表した。

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イラク支援を続行と首相 空自活動への影響注視
 安倍晋三首相は30日午後、イラクのフセイン元大統領の死刑執行について「イラクが安定した国となることを期待しており、国際社会と連携しつつ引き続き支援していく」とのコメントを発表した。

 麻生太郎外相もコメントで、在イラク日本大使館を通じて同国政府から元大統領の死刑執行を確認したとした上で、「国民融和や治安改善といった困難な課題を乗り越え、安定した国になることを期待する」と強調した。

 イラクでは航空自衛隊が首都バグダッドなどへの空輸活動を続けている。空自活動の安全確保のため政府は、元大統領の死刑執行がイスラム教シーア、スンニ両派間の対立などイラク国内の治安情勢に与える影響を注視していく方針だ。

(共同)
(2006年12月30日 19時35分)
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イラク支援のNGO関係者ら「宗派間抗争の激化不安」
イラク情勢
 イラクの元大統領サダム・フセインが30日、絞首刑に処せられた。

 判決確定からわずか4日での死刑執行。イラクの治安が悪化する中、イラクでの支援を続けるNGO(非政府組織)の関係者らからは、「宗派間の抗争が激化しなければいいが」と不安の声が聞かれた。

 「日本イラク医療支援ネットワーク」の事務局の佐藤真紀さん(45)は「イラクにとって、死刑執行がプラスかマイナスかまだ分からない。アラブの世界ではフセインの支持者はまだ多く、内戦の引き金にならないことを願うばかり」と話す。佐藤さんはこの日、支援活動のため、イラクの隣国、ヨルダンへ向かった。

 イラクの子供への医療支援を続けている久山宗彦・カリタス女子短大学長(67)は「大半のイラク人は、フセインを倒さないと、平和は来ないと思っていただろうが、フセインは『自分は国を守ってきた』という自負を持って死んだのではないか。これから国民の間の対立関係を修復していくことが大事だ」と課題を挙げた。

 「アラブの会」代表、中村聡志さん(41)は、「アラブの世界では斬首刑が苦痛を伴わないとされている。絞首刑が執行されたことで、米国主導の裁判だったことが明らかになった」としたうえで、「イスラム教の『犠牲祭』入りと重なった執行は、卑劣に映ったはず。混乱に拍車がかかるだろう」と懸念した。

 バグダッドでは現在、陸上自衛隊などの5人が派遣され、多国籍軍と情報交換や調整を行っている。統合幕僚監部によると、市街地から離れたバグダッド空港近くで勤務している連絡官らが、「テレビで死刑執行のニュースを流しているが、米軍などに動きはなく、淡々とした普通の朝の風景だ」と伝えてきたという。

(2006年12月31日0時51分 読売新聞)
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「勝者の裁き」濃厚 フセイン裁判、米が実質的に介入(朝日新聞)
2006年12月30日22時59分
 フセイン元大統領の死刑確定の際、米ブッシュ政権は「独裁者による支配を法による支配に置き換えようとするイラク国民の努力」と評価していた。処刑については「主権国家であるイラク政府が決定すること」とみなす建前から、表向き介入しない立場だった。

 しかし、処刑直前まで元大統領の身柄を拘束していたのが米軍だった点に象徴されるように、イラクで「法による支配」が確立されたとは言い難い。米国防総省も議会あてイラク情勢報告書の最新版(11月30日付)の中で、イラクでの法治について「構造的な欠陥から深刻な問題が生じている」と認めざるを得ない状態だ。

 このように国内の裁判所が正常に機能しない国や地域では近年、国際社会が代わって正義を実現する国際法廷が設置される場合が少なくない。元大統領が自らの統治下での非人道行為について責任を問われる立場にあるのは疑いない以上、刑事責任について国際法廷による裁きへの道が、理論的には存在した。

 米国はその道を拒み、予算と人員をつぎ込んでイラク高等法廷を設立した。その根拠として「人道に対する罪」の定義などを国際人道法から採り入れてイラク国内法を整備させたが、形式上のことに過ぎなかった。

 ブッシュ政権の手法に共通するのは、国際法を自国の目的に沿ってつまみ食いする姿勢だ。そもそも、主権国家だったイラクに対し、国際法上の合法性に大きな疑義を抱えたまま侵攻したのが米国だ。元独裁者の死刑執行の時だけ「主権」の壁を盾にイラク人の主体的な決定であるかのように装っても、「実質は勝者の裁き」との批判を免れない。

 公正さを満たさない裁きによる今回の死刑執行は、日本人の一部に東京裁判をめぐって今も異論が残るように、スンニ派イラク人の間に禍根を残す可能性がある。元大統領を「殉教者」と見なす論法をかえって勢いづかせかねない。


投稿者 akiuchi : December 31, 2006 05:01 AM