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December 01, 2006
送検された「日本一」:堀病院無資格助産事件毎日新聞)
毎日新聞が得意になって堀病院事件の顛末について連載している。毎日新聞は正義の味方のつもりなのだろうがこの事件を契機に日本の周産期医療崩壊が一気に加速されているという現状認識は全くないようだ。こんなノー天気なジャーナリストに国民の健康を任せていて本当にいいのだろうか?なぜもっと本質に迫る記事がかけないのだろう?・・・なんてことを書くと次はきっと私のところがターゲットにされてしまうのかもしれないという恐怖感を覚える。ブラックジャーナリズムという言葉を彼らに進呈したいくらいだがそれではいくらなんでもひどすぎるかな?単にジャーナリストとしてのレベルが低いという単純な次元の問題なのかも知れない。小松先生の本を是非一度読んで欲しいと切望する。
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送検された「日本一」:堀病院無資格助産事件/1 強制捜査の陰で /神奈川
堀病院(横浜市瀬谷区)の無資格助産事件は、看護師による内診の是非やお産における助産師、看護師の役割などについて広く波紋を広げた。県警の書類送検を機に、改めてその意味を検証する。
◇県警、石橋をたたく
「あす、堀病院を家宅捜索します。患者さんがパニックになる恐れがある。対応をよろしくお願いします」
横浜市医療安全課の職員が、県警生活経済課の捜査員からひそかに電話で通告されたのは、8月23日のことだった。県警幹部は「妊婦に悪影響を与えてはいけないし、転院希望の妊婦も出てくる。ケアをお願いする必要があった」と振り返る。
翌24日朝。小雨がちらつく中、スーツ姿の捜査員数人が堀病院の正面玄関に入った。妊婦を乗せた救急車のサイレンがひっきりなしに鳴る。続いて上着を脱いだ捜査員60人が通用口から病院に入った。マタニティードレスに身をまとった妊婦がけげんそうに見つめたが、捜査員には厳命が下っていた。
「必要以上に院内を歩き回るな」
出産数「日本一」を誇る同病院への捜索は、異例とも言うべき“配慮”の下に進められた。
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捜索容疑は保健師助産師看護師法(保助看法)30条違反。同条は助産師と医師以外は「助産」をしてはならないと定めている。
だが、捜索を受けた日の夜、堀健一院長(78)は集まった報道陣に繰り返した。「うちが特殊か、調べて下さい。ほとんどの所でやってますよ。看護師が内診(産道に指を入れて子宮口の増大を確認する行為)をしたからといって、安全なお産とは関係ない」
強気とも言うべき院長の発言の裏には、保助看法が「助産」について明確な規定をしていないという事情がある。
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内診が「助産」に当たるとの解釈を厚生労働省が明示したのは、4年ほど前だ。02年11月、厚労省は鹿児島県の照会に回答する形で「妊婦に内診を行って子宮口の増大を確認する行為は助産に当たる」と通知した。
さらに04年9月、同省は医師の指示の下で行われた内診も助産行為であり、看護師には認められないとの通知を都道府県に出した。現在も「内診は助産師が教育、経験、知識を踏まえて安全に行えるもの。現段階で保助看法の見直しは考えていない」(同省看護課)との姿勢だ。
一方、産婦人科医らで作る日本産婦人科医会は「看護師の内診が認められないとなれば、多くの診療所や病院で分娩(ぶんべん)が立ちゆかなくなる」と同省の見解に反発。陣痛開始から子宮口全開までの「分娩第1期」の内診は看護師にも認めるよう主張してきた。
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県警はこうした対立にも“配慮”し、堀病院への捜索容疑に子宮口全開から出産までの「分娩第2期」に行われた准看護師の内診も含めた。医療界からの捜査批判を最小限に食い止めたいとの思惑が見え隠れする。
石橋をたたいて渡るような県警の捜査。だが、それでも強制捜査に踏み切ったのには、わけがあった。=つづく
11月28日朝刊
(毎日新聞) - 11月28日13時1分更新
送検された「日本一」:堀病院無資格助産事件/2 分娩記録は語る /神奈川
◇軽視された助産師
県警が堀病院の強制捜査に入った“原動力”となったのは、B4判2枚のペーパーだった。
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03年12月29日。大和市内の実家から通院していた名古屋市の女性(当時37歳)が、堀病院で女児を出産した。女性は出血が止まらず、別の病院に搬送されたが、04年2月に多臓器不全により死亡した。出産と死亡の因果関係は不明だ。
今年6月、県警はこの女性の「分娩(ぶんべん)経過図表」を入手した。
2枚の図表によると、女性は陣痛促進剤の点滴と分娩誘発器具の挿入を受け、午後2時に自然破水。同5時45分、子宮口が約10センチまで全開し、分娩第2期(子宮口全開から出産まで)に入ったことを示す「10センチ」の線上に×印がつけられた。同6時5分、32分にも×印がある。いずれのサイン欄にも同一人物の名前が片仮名で走り書きされている。勤務表を見ると、この人物は助産師資格のない准看護師であることが分かる。
無資格内診の動かぬ証拠だった。
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県警は堀病院に勤務していた看護師らの事情聴取に乗り出した。
「初めは内診をしろと言われてエッ、と思ったが、じきに慣れた」
「患者をだましている気がする」
堀健一院長(78)らの指示で行われていた無資格内診を裏付ける証言が次々と集まった。県警幹部が明かす。「少なくとも現行法上は違法とされる行為が、日本一を標ぼうする産科病院で公然と行われていた。この実態に光を当てる必要があった」
7月末。県警は家宅捜索の方針を固めた。
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他の分娩資料やカルテからは、別の事実も浮かんだ。
亡くなった女性が分娩第2期に入った午後5時45分は、堀病院は準夜勤体制(午後3時半~午前0時半)で、医師1人、看護師3人、准看護師4人、それに助産師1人の計9人が勤務していた。
午後7時41分、女性は女児を出産し、男性医師が取り上げた。女性は子宮が収縮せずに出血する「弛緩(しかん)出血」が始まり、ガーゼ挿入やマッサージなどの止血処置を受けた。
午後8時48分、院内で別の出産があり、同じ医師が取り上げた。医師は女性のもとに戻って止血に当たり、別の女性医師も呼び出された。
午後9時26分、院内でさらに別の女性が出産した。この女性の新生児を取り上げたのは助産師だった。
分娩台帳によると、この日は計16件のお産があったが、助産師が取り上げたのはこの1件のみ。医師が女性の止血にかかりきりになった時、初めて助産師が分娩に関与していた。
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「医師が(赤ちゃんの)取り上げをするのがサービスと思っていた。その方が患者さんが安心すると思った」
県警の家宅捜索を受けた翌日の8月25日。記者会見を開いた堀院長は釈明した。
だが、県警の調べでは、堀病院には院長の指示とみられる看護師、准看護師用の「内診マニュアル」が複数作成されていた。日本助産師会県支部の山本詩子支部長は言う。「助産師はお産の手伝いをしたいと、専門トレーニングを受けてきた人たち。お産にかかわるのは、助産師のアイデンティティーなんです。だから、堀病院では助産師が根づかなかったのでは」
なぜ、堀院長は院内の助産師を分娩に積極関与させなかったのか。毎日新聞は文書や電話で取材を申し込んできたが、堀院長は応じていない。
22日現在、堀病院で勤務する助産師は常勤5人、非常勤5人。県警の捜索時から非常勤が4人増えた。=つづく
11月29日朝刊
(毎日新聞) - 11月29日12時3分更新
送検された「日本一」:堀病院無資格助産事件/3 立ち入り調査 /神奈川
◇及び腰の自治体
「わたしが勤めていた診療所は、堀病院と同じことをやっています」
堀病院の家宅捜索から4日後の8月28日。助産師であるその女性は、震える声で横浜市の福祉保健センターに“告発電話”をかけた。
「(母体から)赤ちゃんが出てくるまでは看護師が診るから」
同市内の産科診療所に勤めていた彼女は同月上旬、院長からそう言われて「違法行為の黙認はできない」と退職したばかりだった。
告発電話で当時の状況を30分近く説明した。だが、職員は一通り聞くと「どうやって調べたらいいんですか?」。女性の名前や連絡先を聞くこともなく、電話を切ろうとしたという。
女性は市の対応に怒りを隠さなかった。
「告発する恐ろしさで手も声も震えた。無資格助産を目の当たりにし、安全に母子を守ることができないと判断した時、保健所(福祉保健センター)が正しく機能してくれなかったら、どこに助けを求めたらいいのでしょう」
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医療法は、保健所を設置する自治体に対し、医療機関に随時立ち入り調査ができる権限を認めている。
さらに01~02年、厚生労働省は看護師の無資格助産が発覚した場合、刑事告発も辞さないよう自治体に求めた。必要に応じて通告なしに立ち入り調査をするようにも通知している。
県警の調べでは、堀病院は03年11月以降、妊婦約7500人に対して計約3万9000回にわたり、無資格の看護師らが産道に指を入れて子宮口の開き具合を確認する「内診」を繰り返していたという。
横浜市は、無資格助産を見抜けなかったのか。
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横浜市は例年10~12月、市内約140病院で医療法に基づく立ち入り調査を実施している。各区の福祉保健センター職員6~7人が半日がかりでカルテなどの文書の確認や設備点検をしている。
だが、堀病院に家宅捜索が行われるまで、市は無資格助産を調査項目に挙げていなかった。捜索後の臨時調査も、すべて事前に医療機関側に通告してから立ち入った。女性が勇気を奮って告発した診療所にも同じ対応だった。市の葛巻丈二朗・医療安全課長は言う。
「(無資格助産は)確認が難しく項目に入れていなかった。医療行為は広範にわたり、定例の調査でそこまでチェックするのは難しい。立ち入り調査の目的は、犯罪捜査ではなく行政指導だ」
同じ政令市である川崎市は、堀病院の捜索後も臨時調査をしなかった。
「医療法では、分娩(ぶんべん)数に合う助産師の必要数が定められていない。調査は国が全国的な基準を作ってやるべきだ。県や市のレベルの問題ではない」
地域医療課の担当者の言葉だ。
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「安全なお産」を訴える「陣痛促進剤による被害を考える会」代表の出元明美さんはこうした自治体の説明に「適切な立ち入り調査をする手順は厚労省の通知で示されており、これを自治体が理解していない」と反論したうえで、こう指摘する。
「自治体は集団検診などで地元の医師に“お願い”をすることも多く、立ち入り調査をすることに遠慮があるのではないか。だが、自治体が違法行為を放置すれば、いずれは大きな事故につながる。もっと市民の安全を守る意識を持って立ち入り調査をしてほしい」
厚生労働省は今後、自治体に対し、助産師数が極端に少ない分娩施設を重点的に調査するよう指導する方針だ。=つづく
11月30日朝刊
(毎日新聞) - 11月30日12時1分更新
送検された「日本一」:堀病院無資格助産事件/4止 山積する課題 /神奈川
◇命、どこに託す
「今までOKだったのになんであかんの。内診くらいいいだろう」
中部地方の産科診療所。堀病院が捜索を受けた報道を見た院長がそうつぶやく姿を、20代の助産師の女性は忘れない。
彼女によると、この診療所は夜勤で医師、助産師がいないことが多く、看護師が新生児の取り上げをすることも珍しくなかった。堀病院の捜索後、夜勤で分娩(ぶんべん)があった場合は医師を呼び出すようになった。院長は「不便だ」とこぼしている。
院長には逆らえない。でも、堀病院の捜索を見て、助産師仲間とひそかに言い合った。
「やっと、わたしたちの言いたいことが理解された……」
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日本看護協会によると、03年度に就業していた助産師は全国で約2万6000人。就業していない「潜在助産師」を含めると約5万5000人に上る。厚生労働省看護課は「マクロな観点では数は足りている」と見る。
だが、全国の産婦人科医で作る日本産婦人科医会は03年の調査で、産科診療所では助産師の充足率が40%に過ぎないとし、偏在が著しいと主張。看護協会も「産科診療所で助産師の不足感が高まっている」と認める。
県内で助産師養成の中心を担う県立衛生看護専門学校(横浜市中区)では現在、定員40人を大きく下回る28人の女性が学ぶ。
例年約250人が受験するが、実習の受け入れ先が減少。定員数を確保できない事態に陥っている。八木美智子副校長が打ち明けた。
「安全意識への高まりもあり、分娩施設側が受け入れ人数を抑制する傾向がある」
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堀病院の捜索を受け、医師団体は「助産師が不足している中、大がかりな捜査は分娩機関に深刻な悪影響をもたらす」などと一斉に反発した。
ただ堀病院の場合、助産師は、いた。県警や横浜市の調べでは、助産師が勤務しているのに、分娩には関与させていなかった。捜査に反発した医師たちはこの“特殊事情”にあまり言及しない。
県西部の公立病院に勤める50代の産科医が指摘する。「助産師は妊婦に付き添い自然な分娩を目指すが、医師は安全を第一に考える。助産院が自然分娩にこだわり搬送が遅れ、苦い思いをした産科医は少なくない。そういう医師ほど助産師を敬遠する」
産科医は長く、看護師に助産師の役割の一部を担わせてきた。日本産婦人科医会は1960年代から、現場の助産師不足を克服するため各都道府県に産科看護学院を設置。研修会を開き、修了者を「産科看護師」として認定していた。2001年に厚労省が禁止の通知を出すまで、現場で内診などを長く担当させてきた。
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激務に疲れてやめていく産科医。定員を確保できない助産師養成所。連携できない産科医と助産師。
ある助産師は言う。
「お産は医師のものでも、助産師のものでもない。妊婦さん自身が、生まれてくる新しい命をどこに託すのか、よく考えなければ」
堀病院は現在、助産師と看護師を名札で区別し、夜勤では助産師1人を必ず配置している。捜索後から11月21日までの計781件のお産では、内診はすべて医師か助産師が行った。調査した横浜市は「状況は改善された」と見ている。=おわり
この企画は伊藤直孝、鈴木一生、堀智行、野口由紀、池田知広、山衛守剛が担当しました。
12月1日朝刊
(毎日新聞) - 12月1日12時1分更新
投稿者 akiuchi : December 1, 2006 05:40 PM