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January 27, 2007
医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/3&4
公的病院の医師を確保するために「高給優遇、副業(アルバイト)OK>非公務員型」というアイデアには大賛成。バイト先が個人開業医であればお互いのためになる。一般の人は公務員がバイトするということには厳しいのだろうが、日本の医師不足を解決する方法はこれしかないのではないだろうか?
医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/3 訴訟倍増、薄れる信頼
◇「患者の話も聞く余裕なく」
東京都内の大学病院に勤める男性医師(31)は、3年たっても立てない女児の姿を見てがくぜんとした。アルバイト先の病院で01年、当直中に出産に立ち会った女児を巡る医療訴訟の法廷。書面で読んではいたが、傍聴席で母親に抱かれた女児は驚くほど小さい。
主治医から引き継いだ時にはへその緒が胎児の体に巻きついている以外は異状なかった。しかし、分べん室に移るころ、急に胎児の心音が落ちた。
破水すると、羊水がにごって胎児が苦しんでいた。すぐに酸素投与などをしたが「新生児仮死」の状態。小児科医師に引き継ぎ、翌日には大学病院に転送されたが、重い障害が残った。
両親には病院幹部が経過を説明し、カルテも開示したが訴訟となった。直接説明する機会がなかった男性医師は「自分が説明しなかったから不信感を持たれたのではないか」と悔やむ。訴訟では、専門医の鑑定で産科のミスは認められず、「期待権の侵害」として1000万円を支払うことで和解した。
100%の安全性を望む患者と、不確実さがつきまとう医療の現実のギャップ。結果が悪いとすぐ訴訟というケースもある。男性医師は「『元気で生まれてくるのは当たり前』というイメージだが、本来は命がけのものだ」と話す。
それでも女児の姿を思うと「自分も足りなかったことを責めなくてはいけない」と感じる。「和解といっても憎しみあって終わっている」。近く家族を訪ね、結果について謝罪するつもりだ。
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最高裁判所の統計によると、96年に575件だった新規の医療訴訟は、05年には倍近い999件になった。医師の病院離れを促す要因になっているとの指摘があるが、病院側が十分に説明していないケースもある。
輿水(こしみず)健治・埼玉医科大総合医療センター助教授は以前に勤務したことがある病院で、入院中の患者から「高血圧の薬が処方されず、具合が悪くなった」と言われたケースを経験した。担当医師は「処方した」と話し、看護師らも「訴えが多い患者さんね」と取り合わない。しかし、輿水医師が確認すると、担当医が処方を忘れていた。
輿水医師が本人や家族に数回にわたって説明し、文書で謝罪して解決した。「確認して薬を処方すれば済んだこと。米国などに比べ、日本では医師や看護師の数が少なく、多忙のためゆっくりと患者さんの話に耳を傾けることができない状態だ。お互いの会話が少ないうえ、社会的な要請や訴訟対策などで書面のやりとりが増えている。こういったことで医師と患者の信頼関係がこんなに薄れてしまったのかもしれない」とため息をつく。
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厚生労働省は05年9月から、日本内科学会への補助事業として、診療に関連した死亡の調査分析事業を始めた。医療機関からの依頼で調査し、再発防止を目指す。しかし、1月23日現在、調査依頼は40例で、うち15例の評価結果報告書をまとめたにすぎない。
患者にとっては、病院の説明で納得できない場合、訴訟以外に真相究明を期待できる場はないに等しい。医師不足で多忙な現場では、十分な説明の時間を取ることも簡単ではない。こうした実情が、医師と患者の関係を悪循環に追い込んでいる。=つづく
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医療クライシス:大阪・市立池田病院、独法化を検討 医師確保へ公立脱却
◇高給優遇、副業OK--非公務員型、患者増図る
約91億円の累積赤字を抱える大阪府池田市の市立池田病院が、経営健全化を目指し、地方独立行政法人への移行を検討していることが25日、分かった。高い給料で優秀な医師を確保し、患者の取り込みを図るなど、公立の「制約」を取り払い、経営改善につなげたい考えだ。大学医局の派遣撤退や、低い給料などの影響で、自治体病院の医師離れは深刻。実現すれば全国的にも珍しい試みになる。【河内敏康】
池田病院は97年に現在の場所に移転・新築し、04年に増床。15診療科364床の中規模病院になった。しかし、経営は芳しくなく、05年度の累積赤字は約91億円にも上る。今年度は、産科医が1人減った影響などもあり、ベッドの稼働率は落ち、病院収入は減少した。
そこで、同病院は昨年6月、15年度に単年度収支を黒字化することを目標とした経営の健全化計画を策定。その中で、現行の体制のまま、経営の改善や医師不足などを解消できる見通しが立たない場合、地方独立行政法人への移行を視野に検討する方針を立てた。
独法化によって、予算執行の裁量幅が広がり、現在は条例で定める医師の給与も、病院独自に定めることができるようになる。医師の身分は、公務員ではない「非公務員型」を想定し、原則禁止されていた医師のアルバイトも可能。医師がアルバイト先の他の病院から患者を新たに連れて来ることで、病院の増収につなげられる可能性もあるという。
全国自治体病院協議会によると、地方独立行政法人化した自治体病院は、大阪府、宮城、長崎両県に計7病院あるが、医師の身分を「非公務員型」とする病院は珍しいという。
生島義輝・同病院事業管理者は「医師不足の中、優秀な医師を確保するには、いかに高給で雇用できるかが重要な課題。経営の立て直しを図る上でも必要な対策だ。安全で安心できる質の高い医療を市民に提供し続けるためにも、地方独立行政法人への移行を含めた効率的な病院のあり方を探りたい」としている。
[毎日新聞 ]
医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/4 事故の犯罪扱いに批判
◇士気減退、組織改善の妨げ
「自分を犯人にしようとしている」
東京都内の病院に勤務する男性医師(46)は、いかめしい5人ほどの刑事が病院に来た時のことを鮮明に覚えている。04年に患者が死亡した際に、警察の取り調べを受けた時のことだ。
患者は70代の女性。心電図などから比較的小さな急性心筋梗塞(こうそく)と判断した。数日後、女性はカテーテルを使った検査の直後に胸の苦しみを訴え、心肺が停止してしまう。心肺蘇生をしながら調べると、心破裂を起こしたことが分かった。
心筋梗塞患者に心破裂が起きることはまれではない。合併症と判断した男性医師は、病理解剖を依頼した。家族の理解も得られた。ところが、監察医務院から警察への届け出を求められた。
刑事たちはカルテなどを押収。「検査のカテーテルで心臓をつつくことはない」と説明しても、検査と死因を関連付けようとするばかりで理解してもらえなかった。
司法解剖の結果、死因の判断に誤りがないことが分かる。しかし、カルテなどは戻らず、1年後に返却を求めると「書類には一切書き込みはするな」と注意され、2週間の期限で貸し出された。男性医師は「まるでこちらが証拠隠滅をするような言い方だった」と怒りをにじませる。
その後、事情聴取を2回受けた。1年3カ月後にカルテは返却され、事件は立件されなかった。「患者の急変には医師もショックを受ける。その時に刑事に土足で入り込まれた心の傷は大きい。『もうやってられない』と思う医師がいてもおかしくない」と話す。
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福島県立大野病院で帝王切開手術中に患者が死亡したことを巡り、産婦人科医が昨年、逮捕、起訴された。医療関係者から医療事故を刑事事件として扱うことに批判が高まり、現役外科医でもある古川俊治弁護士は「米国や英国では、医療事故が刑事事件になることはほとんどない」と指摘する。実情はどうなのか。
東京大医療政策人材養成講座の研究班(筆頭研究者・神谷恵子弁護士)は、00~06年6月に出た刑事判決のうち、判決文が入手できた18件を、処分の必要性など5項目で分析した。医療側と患者側、弁護士など立場が違う7~13人が担当。うち6件は、処分の必要性と処罰の適切さの点から起訴の妥当性が疑われるとの結果になった。
6件の中には、京都大病院で看護師が人工呼吸器に消毒用エタノールを誤って注入し、患者が死亡した事件も含まれている。看護師個人の刑事責任追及は「病院のシステムや教育管理責任、労働環境など真の原因究明を阻害し、医療安全の追求を後退させている可能性がある」と指摘した。
研究班は提言で、業務上過失致死傷罪の成立を犯罪性が明確な場合に限定し、代わりに行政処分を拡充することを提案。特に組織に原因がある場合に備え、医療法に医療機関と開設者に対する改善命令などを規定することを挙げた。さらに、医療事故の原因分析機関の創設も提案した。
医療事故の死因究明や裁判外の紛争処理を巡っては、厚生労働省が今年度中に試案を示し、来年度から有識者の検討会を発足させる予定だ。柳沢伯夫厚労相は、航空・鉄道事故調査委員会に似た専門家機関を作る意向を示している。
しかし、人材の確保など課題が多く、現状の打開にどの程度効果があるかは未知数だ。=つづく
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[毎日新聞 ]
投稿者 akiuchi : January 27, 2007 11:38 AM