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January 30, 2007

周産期医療、ベッドが足りない 安心して産みたい 全病院満床、早産の危機… (福岡)

正常産を1次医療機関でしっかり受けるとともに軽度の異常妊婦は2次医療機関で入院して3次医療機関の負担を軽減させるようにするしか解決策はないだろう。

周産期医療、ベッドが足りない 安心して産みたい 全病院満床、早産の危機…

 ◇あっとLife
 ◆早産の危機…福岡市内は全病院満床 久留米へ40キロ搬送、双子の弟救えず
 「ママ、こっちだよ!」。すべり台の上から毛利洸大(こうだい)ちゃん(3)が笑顔で手を振る。元気な様子からは想像もできないが、洸大ちゃんは予定日より3か月も早く、841グラムの極小未熟児として生まれた。
 母親の和代さん(29)に早産の危険が迫った時、福岡市内の病院はすべて満床で、約40キロ離れた福岡県久留米市の病院まで搬送された。「都市部だからお産は安心という時代じゃない」。和代さんは今、そう思う。病床不足が深刻化する周産期医療の現場を歩いた。(社会部・玉城夏子)
 子どもの遊び場が併設された福岡市の飲食店で、和代さんと会った。近くの一軒家で会社員の夫、夫の両親や祖母と4世代で暮らしている。洸大ちゃんが生まれた時のことを、しっかりした口調で話してくれた。
 双子を妊娠し、出産に備えて仕事を辞めたばかりの2003年7月、強い腹痛に襲われ、午後10時すぎにかかりつけだった同市内の産科医院に駆け込んだ。
 妊娠7か月だったがすでに破水し、15分おきに陣痛が来ていた。NICU(新生児集中治療室)を備えた総合病院でないと対応できない状態で、医師はすぐ搬送先を探し始めたが、福岡大病院、九州大病院などから軒並み断られ、ようやく久留米市の聖マリア病院が受け入れてくれることになった。
 救急車で点滴を受けながら到着したのは午前4時ごろ。絶対安静のまま、10日後に帝王切開で出産。洸大ちゃんは助かったが、816グラムで生まれた双子の弟は2日後に亡くなった。
 保育器に入れられ、生死の境をさまよった洸大ちゃん。懸命に生きようとする小さな命を前に、「ごめんね」と泣いてばかりだったという。
 「病院探しに1~2時間かかった。搬送前に生まれたら、この子も助かってなかった」と、和代さんはつぶやくように言った。
 切迫早産など危険な状態に陥った妊婦を受け入れてくれる病院が見つからず、遠くの病院に搬送されるケースが各地で相次いでいる。
 NICUの病床不足に悩む熊本県から、鹿児島県や福岡県久留米市などに搬送される患者が増えた。このため久留米方面の患者が福岡市に搬送されるようになった。福岡市の病院も余力がなくなり、福岡から逆に久留米などへ搬送されるといった「悪循環」に陥っている。
 「九州医療センター 満床▽九州大病院 満床▽福岡大病院 満床以上」
 福岡都市圏の総合周産期母子医療センターに指定されている福岡大病院は週2回、「空きベッド情報」を作成し、医療機関にファクスで送っている。1月中旬の情報にも病床の余裕のなさがにじんでいた。妊婦や赤ちゃんへのしわ寄せ、医師の労苦など実態を取材するほど、綱渡りのような現状が見えてきた。
 周産期医療の進歩で、数百グラムの赤ちゃんも救えるようになった。だが亡くなる子や重い後遺症を背負う子も少なくはない。多くの病院で、自宅へ帰ることができない長期入院児も、NICUの病床でケアを受けていた。
 洸大ちゃんは幸い元気に育ち、03年12月に2650グラムで退院した。0歳と1歳の時、肺炎などで2回入院したが、3歳児検診では「順調」と太鼓判を押された。
 1年前から、福岡市の九州医療センターで開かれている育児サークル「ひまわり」に通い始めた。小さいうちは病気しやすく、外に出る機会も少ない洸大ちゃんのような「未熟児出身児」やその母親を支援するため、9年前にスタートした。
 「同じ体験をした人たちと話すと、私も肩の力が抜けて、『表情が柔らかくなったね』と言われます」と和代さん。近所の育児サークルではおびえてしまった洸大ちゃんも、生き生きと遊ぶようになった。4月からは幼稚園。元気に通ってくれそうだ。
 和代さんは今、妊娠6か月。また同じ状況になったら、と不安になる。「遠距離の搬送は、本人にも家族にも負担が大きい。安心して産むことができる環境づくりを皆で考えることが必要」と訴える。
 ◆激務の医師 8割が平均12時間勤務
 医師の過密労働も問題になっている。久留米大学病院は昨年5月、同病院と系列の14病院に勤務する産婦人科医局員の労働実態を調査。講師や医員など61人のうち42人から回答を得た。
 それによると、「平均勤務時間が1日12時間を超える」と答えた医師が8割近くに上った。半数近くが月11回以上の当直をしており、当直時の平均睡眠時間は4・8時間。1か月の平均休日は2・5日だった。休日も、学会出席などでつぶれることが多い。
 昨年8月、奈良県の妊婦が19病院に受け入れを断られ、大阪府の病院で死亡したケースでは、満床や人手不足が受け入れ拒否の主な理由だった。久留米大病院総合周産期母子医療センターの堀大蔵・産科部門診療部長は「同様の事例がいつ起きてもおかしくない状態。早急な医師確保対策が求められる」と話す。

 図=福岡大病院が搬送受け入れを断った理由

 写真=医師や臨床心理士、保育士らが支える育児サークル「ひまわり」は、子どもも親もみんな笑顔(福岡市の九州医療センターで)

[読売新聞 ]

投稿者 akiuchi : January 30, 2007 07:50 AM