« 白梅学園大の山路憲夫(やまじ・のりお)教授(社会保障論) | メイン | 医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/8止 食いとめよ「士気」崩壊 »

February 04, 2007

医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/7 研修医、都会に集中

新臨床研修制度の評判が悪いが「医局」という封建制の強い組織では若い人を集めることができないということに偉い先生がもっと早く気付かなければならなかったのだ。教育と研究と臨床の三本柱が医局の役目と言われたが一番の機能は「人材派遣」だったのだ。それが機能しなくなった現在それに代わるシステムが必要なのだと思う。

研修医、都会に集中 忍び寄る崩壊の足音/7(大阪)

記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

【2007年2月2日】
医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/7 研修医、都会に集中

 ◇広がる病院格差

 1-2年目の研修医が各診療科を経験することを義務付ける「新医師臨床研修制度」の導入に伴い、地方大学出身の研修医が都会に流れ込む現象が起きている。

 北陸地方出身で岡山県の大学を卒業した男性研修医(25)は、出身県の病院の合同説明会で、「研修医が来てくれない。願書を出すだけでもいいから」と勧誘するのを聞いて、地方の実情に衝撃を受けた。「医師の少ない病院は、当然雑用が増える。患者と接する時間があるのか、勉強できるのか」。友人とともに途中退席し、東京の大学病院を選んだ。現在の収入は月15万円程度だが、地元の病院ならその2倍で、ボーナスもあった。

 大阪市内の病院で働く男性医師(26)は、04年春、生まれ育った四国を離れ、この病院で研修医としての第一歩を踏み出した。「新しい研修制度がなかったら、そのまま地元の大学医局に所属したかもしれない。でも2年間の研修で、都市部で働くメリットを感じた。近くに多くの大学や病院があり、腕を磨くには都会の方がいい」

 大阪府内で研修医生活を送る佐賀大医学部出身の女性医師(32)は「地方に引き止めるなら、収入が格段に多いとか特別なメリットがないと誰も残らない」と訴える。

 医療研修推進財団の07年度版「臨床研修病院ガイドブック」によると、研修医1年目の給料は、東京や大阪では月給30万円未満の病院の方が多いが、多くの県では30万円以上の方が圧倒的だ。だが、研修医は都会の病院を目指す。

   ■   ■

 約500床を持つ堺市立堺病院は、07年度の研修希望者が定員の9・8倍に達した。公立病院では、全国有数の倍率を誇る人気だ。地方を離れる研修医も多く受け入れており、30年以上前から国の臨床研修病院としてノウハウを蓄積したことが人気の秘密とみられる。

 男性の研修医(29)は「この病院には医師を育てようという思いがあふれている。診療科の垣根も低く、研修医同士で知識を共有できる。ここで、医師としての下地を、と思った」と語る。

 研修医に人気が高くても、大学医局の医師引き揚げで病院運営に少なからず影響が出た。小児科1次救急受け入れを昨春中止。こうした事情もあり、研修医にそのまま病院に残ってもらい、自前で医師を確保したいとの思いが強い。

 田代扶美雄総務課長は言う。「医師不足を理由に診療科を縮小したり休診するのでは、患者に迷惑をかける。優秀な医師を採用することで、優秀な研修医も集まり、医師を自前で養成することにつながる。患者に病院を選んでもらうには、まず医療従事者に選んでもらう病院を目指すべきだ」

 06年度採用の13人のうちの1人と、07年度採用の11人中2人が、堺病院で研修を積んだ医師だ。

   ■   ■

 卒業しても地方に定着せず、都会を目指す研修医たち。一方で、研修医を確保するのに力を注ぐ都市部の病院……。

 全国医学部長病院長会議で地域医療に関する専門委員会の委員長を務める岩手医科大の小川彰医学部長は「医師不足の現状を招いた最大の原因は新しい臨床研修制度にある。こんな状況が続けば、地方の医師不足は目を覆うほどになるだろうし、都市部でも医師を自前で育てるノウハウを持たない病院は、医師を確保できない。病院の格差はますます広がるのではないか」と警告する。=つづく

……………………………………………………………………………

 ご意見、ご感想をお寄せください。〒530-8251(住所不要)毎日新聞科学環境部「医療クライシス」係。ファクスは06・6346・8187、Eメールはo.kagaku@mbx.mainichi.co.jp




投稿者 akiuchi : February 4, 2007 06:12 AM