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February 27, 2007

下野新聞の連載企画「お産危機 とちぎの現場から/上/急減する分娩施設/妊婦集中 予約を制限/「ハイリスク」対応深刻」

地元紙が栃木県のお産について連載を始めた

企画/お産危機 とちぎの現場から/上/急減する分娩施設/妊婦集中 予約を制限/「ハイリスク」対応深刻
2007.02.24 朝刊 1頁 第1面 (全1,382字) 
 県内のお産が危機にひんしている。分娩(ぶんべん)ができる現場は急減し、分娩を続ける施設は押し寄せるお産に対応しきれずに分娩予約の制限が日常化しつつある。このままでは、思うように産み場所を見つけられない「お産難民」の発生が避けられない情勢だ。県内の現場でどんな事態が進み、医師はなぜお産から遠ざかるのか。お産危機の実相を報告する。


 「妊婦が押し寄せてくる。分娩をやめた開業医からの紹介が増えてきた」。宇都宮のある産科医院の医師は昨年暮れから、産み場所を探す妊婦の動きを肌で感じ始めたという。

 同じ医院の看護師は「少し前なら妊娠三十週くらいでも分娩予約はできた。しかし今は十週ごろでないと難しい。現段階で七月までの予約は締め切り、八月からも制限せざるを得ない」

 昨春時点で分娩に対応していた県内医療機関は約五十。以降、少なくても三病院と五診療所が分娩を中止または中止する見込みとなった。そのほとんどが宇都宮に集中している。これらの分娩実績合計は年約二千三百件で、県内出生数の一割を超えるスケールだ。


 ▽現状でギリギリ


 県が年明けに実施した産科調査でも、県内病院が現状に上乗せして分娩に対応できる「余力」は年約四百件にとどまり、県は「余力はほとんどない」と分析。

 診療所を含めた余力は約千九百件になるが、産科医を取り巻く環境の厳しさからそれをどこまで保てるかの見込みは立たない。

 複数の産科医は「現状ならギリギリ吸収できるだろう。だが分娩中止がさらに続出すればパニックになるかもしれない」と予測する。


 ▽宇都宮から搬送


 切迫早産などハイリスク分娩の対応体制はとりわけ宇都宮で危機的だ。

 県内で最も医療体制が充実しているはずの宇都宮から、母胎搬送で芳賀赤十字病院(真岡市)に回るケースが目立ち始めている。

 芳賀赤十字は二〇〇四年に深刻な常勤医不足に見舞われたが、現在は四人の常勤産科医がおり「県内有数の体制」との評価がある。〇六年に受け入れた六十六件の母胎搬送のうち、十二件が宇都宮からだった。

 「宇都宮は人口に見合うだけの産科二次病院がない」と同病院の渡辺尚産婦人科部長。宇都宮で重症者を受け入れる二次病院は済生会宇都宮、国立病院機構(NHO)栃木(旧国立栃木)、宇都宮社会保険の三つだが、うちNHO栃木と宇都宮社会保険は、常勤医不足から基本的に産科の救急患者を受け入れられない状態だ。


 ▽受け入れ率低下


 地域の二次病院が中程度のハイリスク分娩に対応し、さらに重い症例を「最後のとりで」である三次病院の自治、獨協両医大が受け入れる-。それがあるべき形とされるが、現在は正常分娩から重症例までが二大学に集中する。

 現在、自治と獨協合計で年約二千件のお産を扱い、増加傾向。増える母胎搬送受け入れ要請に対応しきれず、受け入れ率も低下し続けている。

 獨協の総合周産期母子医療センターの渡辺博センター長は指摘する。

 「分娩場所を探す人たちが増え、このまま両大学での分娩が増え続けると、一-二年でパンクしてしまう可能性がある。二大学がもし分娩を受け入れられなくなったら、それ以上は県内で産めないことになり、ハイリスクの受け入れ先もなくなってしまう」

(次回から社会面に掲載します)


 [写真説明]県が非公開の県医療対策協議会・産科部会で示した産科事情に関する調査結果。病院に関して「分娩余力はほとんどない」と分析されている


下野新聞社

投稿者 akiuchi : February 27, 2007 08:08 AM