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March 07, 2007

[鹿児島の視点]奄美群島 出産、不安抱える 子宝の島、産科医不在=鹿児島

島の医療をどうするか?東京のお役人の頭の中では島国日本の妊婦はどういうお産をしたらいいと考えているのだろうか?ヘリコプターで集約化か?


[鹿児島の視点]奄美群島 出産、不安抱える 子宝の島、産科医不在=鹿児島

 ◆新生児みな島外誕生 家計、母体に重い負担/喜界
 「与論町の妊婦は、正常・異常を問わず、ほとんどが島外で分娩(ぶんべん)しており、費用は多大なものになっています」
 和泊町で2月8日、沖永良部島と与論島の町議が集まる大会が開かれ、与論町議の野口靖夫さんが声高に訴えた。与論島には助産院が一つあるだけ。妊婦のほとんどは沖縄の病院で出産に臨む。
 奄美群島では喜界、加計呂麻、請(うけ)、与路、与論の5島に常勤産科医がいない。議員大会では、5島などの妊婦の出産経費助成を県に求める議題が全会一致で採択。5月の奄美群島議員大会に提案されることになった。
 喜界町(喜界島)の主婦岩崎千奈津さん(32)も初産を心配する一人。奄美市の県立大島病院での出産を考えているが、出産予定日の後には台風シーズンが来る。「何かあった時に、船も飛行機も出なかったらどうしよう」。不安は募るばかりだ。
 喜界町では2002年6月、喜界徳洲会病院が産婦人科を休止して以来、年間60~70人という新生児はみな島外で誕生している。町は町内の妊婦に対し、6回を上限に奄美市へのフェリー片道運賃3500円を助成しているが、それでも負担は重い。出産予定の1か月前からは奄美大島で待機するよう医師から勧められるため、親類や知人がいなければ入院かホテル、ウイークリーマンションを利用する。奄美大島の人に比べ15万~20万円の費用が余計にかかるという。
 母体への負担も大きい。喜界徳洲会病院は2週間に1回、妊婦検診を実施。しかし、妊娠8か月以降は出産する病院での検診が必要となる。フェリーでの往復は一般的に午前5時前に喜界島を出て、午後8時か同11時すぎに帰島。飛行機なら奄美大島まで片道20分だが、料金はフェリーの2倍になる。
 岩崎さんは4人のきょうだいと一緒に、にぎやかに暮らした。今もきょうだいに助けられることが多い。「自分の子どもにもそんな暮らしをさせたいけど……。せめて自宅で陣痛を迎えて、産むことはできないのかな」。ささやかな願いを口にした。
 ◆都市化進み、育児環境悪化
 奄美群島の子だくさんは、岩崎さんが話すような地域の「支え合い」に依拠する点が大きい。県が行った奄美群島での「長寿・子宝」調査(2002~03年度)では、夫や実家の父母のほか、友人や近所の人からも育児支援を受けている人が39・9%もおり、子だくさんを支える要因は「『子は宝』という価値観」「子育てに対する親族や地域の支援網」と結論づけた。
 しかし、異変も起きている。都市化が進む奄美市名瀬地区では、10歳代での出産が目立っている。市健康増進課の調べによると、母親が20歳未満の割合は、県全体で約2%なのに対し、名瀬地区では約4・5%。育児能力が十分でないのに何人も産んで、劣悪な環境に子どもを追いやったり、実家に子どもを置いて家出したりする例も出ているという。同課の保健師郷田早苗さんは「単純に子どもが多く生まれればいいというのではない。生まれた後の環境を整える必要もある」と指摘する。
 県本土より所得水準の低い奄美では、出産費用の負担も島民に重くのしかかる。「鹿児島が誇る子宝の島」は、住民意識や親類・地域に頼った支援網だけでは維持できない。多面的な環境整備が急務だ。
 ◆産科医不在不足、悩み深刻 県立大島病院3人で月54件
 「子宝の島」を支える奄美の産科病院も、全国的な傾向と同様、医師不足に悩んでいる。
 奄美大島で出産を受け付ける医療機関は2か所。うち、奄美市の県立大島病院は奄美大島と、常勤産科医がいない喜界島など周辺4島の出産の約90%を受け持つ。しかし、1月からは産科医が1人減り、3人に。同病院に医師を派遣する鹿児島大付属病院でも医師が不足し、余裕がなくなったためという。4月には元の数に戻る予定だが、3人で月平均54件のお産をこなす激務が続く。
 松元勇・産婦人科部長は、「全国的な産科医不足と県の財政難による県立病院全体の赤字経営から、病床も産科医もこれ以上増やすのは無理」と話す。同病院の妊婦検診や分娩(ぶんべん)費用は、公立総合病院の全国平均より2~3割以上安いという。しかし、それすら払えないため検診に来ず、危険な状態で運ばれてくる妊婦もいる。
 さらに、累積数億円という分娩費の未払いも大きな問題となっている。「出産費用も徐々に引き上げる必要があるかもしれない」と厳しい台所事情を明かした。
 一方、出産ができる医療機関は徳之島と沖永良部島では各2か所あり、産科医は徳之島には常勤1人と非常勤4人、沖永良部島では常勤医2人が受け持っている。徳之島では約90%、沖永良部島では約70%の島民が、それぞれの島で出産しているが、いずれもハードな医療現場には変わりない。(里村兆美)
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 ◆奄美群島の出産関連データ
 県によると、奄美群島では2004年中に1103人の子どもが生まれた。前年比では47人減。
 1人の女性が妊娠可能な期間に出産する子どもの数の平均値である「合計特殊出生率」は、1998年から2002年の5年間平均で、奄美群島全体で2.04。全国平均の1.36より0.68ポイント、県平均の1.55より0.49ポイントそれぞれ高かった。
 市町村別の合計特殊出生率ランキングでは、天城町が2.81で全国2位。上位20位の中に奄美群島の7町村(旧住用村を含む)が名を連ねた。

 写真=親子の笑顔があふれる奄美市の育児サークル。「子宝の島」では、この笑顔を絶やさない環境整備が求められている

[読売新聞

投稿者 akiuchi : March 7, 2007 07:01 AM