February 13, 2007

きっこのブログ:カメムシ大臣は「失言する機械」?

昨年の日本ブログ大賞を受賞した「きっこのブログ」に産科医不足について詳しく書かれている記事を見つけた。きっこのブログというものがあることすら知らなかったのだが30代の独身女性がこのように的確に状況を分析して若者に支持されているとすれば頼もしいと感じた。

きっこのブログ
2007.02.12
カメムシ大臣は「失言する機械」?
http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/

投稿者 akiuchi : 03:57 AM

December 31, 2006

フセイン元イラク大統領の死刑執行

2006年を締めくくるニュースとしてサダム・フセイン元イラク大統領の死刑執行が報じられた。アメリカ追従の日本政府としては支持するしかないのだろうが東京裁判などと同様に勝者(アメリカ、シーア派)による判決が今後どのように歴史的に評価されるのか注目したい。いずれにしろ2007年が世界にとって平和な年となることを祈りたい。宗教とは何か?国家とは何か?これから日本国はどうなるのか?来年はもう少し世界の状況にも目を向けたいと思う。「深く地域に根差して広く世界に開く」というアップルのキャッチコピーを考えたころ(=原点)にもう一度戻って来年はやり直したい。

フセイン元大統領の死刑執行・「人道に対する罪」 (日経新聞)
 【バーレーン=加賀谷和樹】イラク政府は30日、イスラム教シーア派住民を虐殺した「人道に対する罪」で死刑が確定していたフセイン元大統領(69)の絞首刑を執行した。国営テレビが伝えた。判決確定からわずか4日だった。ほぼ四半世紀にわたりイラクを恐怖政治で支配してきた独裁者は、自国の法廷で犯罪者として裁かれて生涯を終えた。

 イラクのマリキ首相は求心力を得るために、旧政権を支えたイスラム教スンニ派への元大統領の影響力を排除しようと死刑執行を急いだとみられる。ただ、スンニ派武装勢力の反発で治安がさらに悪化する恐れもある。裁判の公正さに対して、欧州各国や国際人権団体からの批判も広がりそうだ。

 元大統領の絞首刑はバグダッド市内にある政府施設で同日午前6時(日本時間正午)ごろ、執行された。地元メディアによると、執行にはイラク高等法廷の判事や政府当局者、イスラム教聖職者の計7人が立ち会った。国営テレビでは執行直前の元大統領の姿と、処刑後の遺体の顔が映された。 (19:24)

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米「公正な裁き」、欧州は死刑批判 中日新聞
 【ワシントン=久留信一】米政府は29日深夜(日本時間30日午後)、「サダム・フセインは公正な裁きを受けた」とするブッシュ大統領の緊急声明を発表し、フセイン元イラク大統領の死刑執行が正当な司法手続きによるとする立場を強調した。処刑に対する国際的な批判は強まっているが、ブッシュ政権は今後予想されるイラクの治安悪化対策に全力を挙げる構えだ。

 ブッシュ大統領は声明の中で、処刑について「イラクが民主国家に進む上での重要な一里塚」と位置付け、同国が「テロとの戦い」での米国の同盟国として安定することに期待感を表明した。

 裁判の公正さを疑問視し、死刑に反対してきた欧州諸国や国際人権団体などの批判に対しては、「自国民に対する恐るべき犯罪に対する代償」と指摘。処刑が「法によって統治される社会を築こうとするイラク国民の固い決意」で実現したとの立場を強調した。

 一方、処刑によってイラクの治安が一層悪化する懸念も強い。ブッシュ大統領はこれまでに、イスラム教シーア派指導者のハキム師、スンニ派指導者であるハシミ副大統領と会談するなど、イラクの各派指導者に対し政治的和解に向けた協力を求めている。

 さらに、イラクを今月訪問したゲーツ国防長官は現地司令官と協議し、イラクの隣国クウェートに来年1月初め、米軍待機部隊3500人を派遣することを決定した。

 現在、ブッシュ政権はイラク政策修正に向けた大詰めの作業を進めている。「2008年3月までの撤退は可能」とした超党派の「イラク研究グループ」による報告書がたたき台で、当面の治安安定対策として治安部隊の一時的増強と、和解を求める政治的働きかけの両面を打ち出すとみられる。

 ただ、03年3月のイラク開戦以来、駐留米軍の戦死者は3000人近くに達している。

 早期撤退を求める米世論は強まっているが、フセイン元大統領処刑による混乱が長期化すれば、修正政策の作成作業がさらに困難になることも予想される。
 

 【ロンドン=岡安大助】米国とともにイラク戦争に参戦した英国のベケット外相は30日、フセイン元大統領の死刑執行について、人道上の観点から非難する一方で「フセイン元大統領はこれまでの重大犯罪に対し、責任を取らされた。イラクには民主的に選ばれた政府があり、私たちは主権国家の決定を尊重する」との談話を発表した。
 

 【パリ=牧真一郎】イラクのフセイン元大統領の死刑執行を受け、他の欧州諸国とともに死刑廃止を主張しているフランスは30日、「すべてのイラク人が未来を見つめ、国民の和解と統一に向けて努力することを求める」とする外務省声明を発表した。

 声明では「これまで以上にイラクへの全面的な主権回復と国の安定を目指さなければならない」と国際社会の責務を指摘した。

 一方、バチカン法王庁の報道官は同日、「死刑は報復の気持ちを育て、新たな暴力の種をまく危険性がある。正義を構築し、社会を和解させるための手段とはならない」と述べた。
 

 【ベルリン=三浦耕喜】イラクのフセイン元大統領に対する死刑が執行されたことについて、ドイツ外務省は30日、「ドイツ政府は欧州連合(EU)と同じく、基本的にいかなる条件下でも死刑を認めない」との声明を発表し、死刑に反対する立場を強調した。

 同時に、声明では「残忍に国民を圧迫し、罪なき数千の人々が殺され、行方不明になった」として、元大統領への断罪には一定の理解を表明。「信条、宗教にかかわりなく、すべてのイラク社会が結び合うことが決定的に重要となる」として、国民的和解を求めた。

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12月31日付・読売社説(1)
 [フセイン処刑]「憎悪の悪循環をどう断ち切るか」

 政治色が濃い性急な死刑執行ではなかったか。国民融和が求められるイラク再建へ、今後どのような影響を及ぼすか、見極める必要がある。

 「人道に対する罪」で死刑が確定していたイラクの元大統領サダム・フセインに対する絞首刑が執行された。イラク高等法廷の上訴審で、死刑が確定してわずか4日後の執行だった。

 約30年間にわたりイラクを強権支配した元大統領は、イスラム教シーア派やクルド民族に対する苛烈(かれつ)な弾圧政策で、イラクの「安定」を維持してきた。一方、スンニ派国民にとっては、スンニ派権力の象徴とみなされてきた。

 死刑執行は、現在、イラクで激化する宗派抗争をさらにあおりかねない。そのため、処刑のタイミングには、政治的判断の余地もある、との見方もあった。

 だが、シーア派が主導するマリキ政権は、むしろ執行を急いだ。

 治安改善に有効策を打ち出せないまま求心力を失いつつある政権浮揚のため、シーア派やクルド民族の復讐(ふくしゅう)心に訴えようとしたのだろうか。現在の情勢は、フセイン個人の命運とは直接かかわりがないほど深刻化している、との判断も働いたのだろうか。

 マリキ政権にとっては、大きな賭けであるのは間違いないだろう。

 マリキ首相が最優先すべきは、国民和解の道を探ることだ。それなしには、政権維持は難しく、いかなる再建策も絵に描いた餅(もち)となる。

 処刑後、シーア派住民が多い南部の町の市場で爆発事件が発生し、数十人が死傷した。処刑との関連は不明だが、マリキ政権は、スンニ派が元大統領の死を前面に押し出し、攻勢を強めてくることを覚悟しなければなるまい。

 フセイン裁判は、イラク民主主義を試す機会でもあったが、政治指導者が介入するなど、多くの疑義が指摘された。法の支配を無視した元大統領に対し、選挙で選ばれた新生イラクの指導者は、民主的手続きを経た裁判の先例を残す好機を失った、との見方も出ている。

 クルド人虐殺やクウェート侵攻など、フセイン政権による別の犯罪の真相解明が困難になった点も気がかりだ。

 国際社会、とりわけ米国のイラク支援がますます大切だ。

 ブッシュ大統領は、年明けにも新たなイラク政策を明らかにする予定だ。これまでのイラク政策のどこが間違っていたのか、なぜ機能しなかったのか、率直な検討が必要だろう。

 柔軟で効果的な新政策を打ち出し、イラク支援の実を挙げることが重要だ。

(2006年12月31日1時32分 読売新聞)
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イランなど歓迎、欧州には戸惑い フセイン元大統領処刑(朝日新聞)
2006年12月30日23時10分
 イラクのフセイン元大統領処刑の知らせに、旧フセイン政権と敵対した国は歓迎する一方、死刑を廃止している欧州などでは疑問や戸惑いの声が上がった。

 イランのアセフィ外務次官は、国営イラン通信(IRNA)に「処刑は、イラクの人々の勝利だ」と語った。イスラエルのペレス副首相は公共ラジオ放送で「サダム・フセインは自ら死を招いた」と述べた。

 イラク戦争を戦った英国の反応は複雑。ロイター通信によると、ベケット外相は「元大統領の恐ろしい罪の一部を、イラクの法廷が裁いた事実を歓迎する」としつつ、改めて「世界中の死刑廃止を主張する」と述べた。

 フランス外務省は声明でイラク国民に「未来を見すえ、国の再建と統一に努めてほしい」と呼びかけ、「他の欧州諸国とともに死刑廃止を主張するフランスは、30日の処刑を記憶にとどめる。この決断はイラク国民と主権を持つイラク当局によるものだ」とした。

 死刑に原則反対のロシアは、外務省のカムイニン情報新聞局長が「国際社会の呼びかけにイラク政府が応えなかったことは遺憾だ」と語った。パレスチナ自治政府で内閣を握るイスラム過激派ハマスの報道官は「フセイン氏は戦争捕虜。処刑は国際法に違反する」とした。

 中国外務省の秦剛・副報道局長は「イラクの問題はイラク国民の決定によるべきだ」との声明を発表した。

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イラク支援を続行と首相 空自活動への影響注視
 安倍晋三首相は30日午後、イラクのフセイン元大統領の死刑執行について「イラクが安定した国となることを期待しており、国際社会と連携しつつ引き続き支援していく」とのコメントを発表した。

 麻生太郎外相もコメントで、在イラク日本大使館を通じて同国政府から元大統領の死刑執行を確認したとした上で、「国民融和や治安改善といった困難な課題を乗り越え、安定した国になることを期待する」と強調した。

 イラクでは航空自衛隊が首都バグダッドなどへの空輸活動を続けている。空自活動の安全確保のため政府は、元大統領の死刑執行がイスラム教シーア、スンニ両派間の対立などイラク国内の治安情勢に与える影響を注視していく方針だ。

(共同)
(2006年12月30日 19時35分)
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イラク支援のNGO関係者ら「宗派間抗争の激化不安」
イラク情勢
 イラクの元大統領サダム・フセインが30日、絞首刑に処せられた。

 判決確定からわずか4日での死刑執行。イラクの治安が悪化する中、イラクでの支援を続けるNGO(非政府組織)の関係者らからは、「宗派間の抗争が激化しなければいいが」と不安の声が聞かれた。

 「日本イラク医療支援ネットワーク」の事務局の佐藤真紀さん(45)は「イラクにとって、死刑執行がプラスかマイナスかまだ分からない。アラブの世界ではフセインの支持者はまだ多く、内戦の引き金にならないことを願うばかり」と話す。佐藤さんはこの日、支援活動のため、イラクの隣国、ヨルダンへ向かった。

 イラクの子供への医療支援を続けている久山宗彦・カリタス女子短大学長(67)は「大半のイラク人は、フセインを倒さないと、平和は来ないと思っていただろうが、フセインは『自分は国を守ってきた』という自負を持って死んだのではないか。これから国民の間の対立関係を修復していくことが大事だ」と課題を挙げた。

 「アラブの会」代表、中村聡志さん(41)は、「アラブの世界では斬首刑が苦痛を伴わないとされている。絞首刑が執行されたことで、米国主導の裁判だったことが明らかになった」としたうえで、「イスラム教の『犠牲祭』入りと重なった執行は、卑劣に映ったはず。混乱に拍車がかかるだろう」と懸念した。

 バグダッドでは現在、陸上自衛隊などの5人が派遣され、多国籍軍と情報交換や調整を行っている。統合幕僚監部によると、市街地から離れたバグダッド空港近くで勤務している連絡官らが、「テレビで死刑執行のニュースを流しているが、米軍などに動きはなく、淡々とした普通の朝の風景だ」と伝えてきたという。

(2006年12月31日0時51分 読売新聞)
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「勝者の裁き」濃厚 フセイン裁判、米が実質的に介入(朝日新聞)
2006年12月30日22時59分
 フセイン元大統領の死刑確定の際、米ブッシュ政権は「独裁者による支配を法による支配に置き換えようとするイラク国民の努力」と評価していた。処刑については「主権国家であるイラク政府が決定すること」とみなす建前から、表向き介入しない立場だった。

 しかし、処刑直前まで元大統領の身柄を拘束していたのが米軍だった点に象徴されるように、イラクで「法による支配」が確立されたとは言い難い。米国防総省も議会あてイラク情勢報告書の最新版(11月30日付)の中で、イラクでの法治について「構造的な欠陥から深刻な問題が生じている」と認めざるを得ない状態だ。

 このように国内の裁判所が正常に機能しない国や地域では近年、国際社会が代わって正義を実現する国際法廷が設置される場合が少なくない。元大統領が自らの統治下での非人道行為について責任を問われる立場にあるのは疑いない以上、刑事責任について国際法廷による裁きへの道が、理論的には存在した。

 米国はその道を拒み、予算と人員をつぎ込んでイラク高等法廷を設立した。その根拠として「人道に対する罪」の定義などを国際人道法から採り入れてイラク国内法を整備させたが、形式上のことに過ぎなかった。

 ブッシュ政権の手法に共通するのは、国際法を自国の目的に沿ってつまみ食いする姿勢だ。そもそも、主権国家だったイラクに対し、国際法上の合法性に大きな疑義を抱えたまま侵攻したのが米国だ。元独裁者の死刑執行の時だけ「主権」の壁を盾にイラク人の主体的な決定であるかのように装っても、「実質は勝者の裁き」との批判を免れない。

 公正さを満たさない裁きによる今回の死刑執行は、日本人の一部に東京裁判をめぐって今も異論が残るように、スンニ派イラク人の間に禍根を残す可能性がある。元大統領を「殉教者」と見なす論法をかえって勢いづかせかねない。


投稿者 akiuchi : 05:01 AM

November 08, 2006

特集:奈良・妊婦転送死亡 理想の体制築けるか----周産期医療の現状と課題

珍しくいつも一方的な医師批判に終始している毎日新聞が自己批判めいた記事(?)を掲載していた。日本のマスコミ(マスゴミという人もいるようだが)による偏向”医療報道”が改善される可能性はあるのだろうか?

「 一方、報道への批判も。ある読者は「人手不足で過酷な勤務が続く中、こまやかなケアができないのが日本の産科医療の現状。力を出し切っても結果が悪ければ犯罪者として糾弾されるから医学生が少なくなる」と指摘。米国在住の外科医は「司法判断、マスコミの過熱報道のため、医師は一か八かで頑張って患者を助けようということができなくなっている。“萎縮(いしゅく)防衛医療”は既に始まっている」と記した。」
理想の体制築けるか 周産期医療の現状と課題
06/11/07
記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社
ID:357814


特集:奈良・妊婦転送死亡 理想の体制築けるか----周産期医療の現状と課題

 奈良県大淀町立大淀病院で意識不明になった妊婦を転送する病院がすぐに見つからず、大阪府内の病院で死亡した問題は、地域によって周産期医療の体制に差がある現実を示した。この問題を受け、国は来年度中に緊急かつ高度な治療が必要な母子に対応する「総合周産期母子医療センター」を整備し終えることを明言した。誰にとっても身近な問題だけに、報道に対し、さまざまな意見が届いている。理想的なシステムは築けるのか。周産期医療の現状と課題を考えた。

 ◆奈良

 ◇後方病床少なく、集中治療室の回転率低下 新生児受け入れ、悪循環

 今年8月8日午前0時ごろ、奈良県五條市の高崎実香さん(32)が大淀病院で分娩(べん)中、意識不明に陥った。病院は同県内の拠点病院となっている県立医科大付属病院(橿原市)、次いで県立奈良病院(奈良市)に受け入れを打診したが、いずれも満床だった。この2病院を含めて19病院(奈良県2病院、大阪府17病院)で受け入れが不可能とされ、高崎さんは約6時間後、約60キロ離れた国立循環器病センター(大阪府吹田市)に収容された。男児を出産したが、高崎さんは同月16日に死亡した。

 高崎さんの死因は脳内出血だったが、大淀病院は、妊婦が分娩中にけいれんを起こす子癇(しかん)発作と診断。大淀病院の原育史院長は、問題発覚後の会見で「子癇発作の疑いとした点で、判断ミスがあった」と話した。

 今回のケースでは、全国トップレベルの周産期医療体制を誇る大阪府でも17病院が受け入れられなかった。病床数不足や医師不足などを背景に、高リスクの患者の受け入れが大都市でも厳しい状況であることを示した。毎日新聞が17病院のうち9病院に取材した結果、大半が「満床」や「処置中」などだった。

 一方、奈良県の柿本善也知事は「速やかな医療提供が出来なかったことを、誠に残念に思います」とコメントし、未整備の総合周産期母子医療センターを来年度の早期に設置すると明言した。

 同県の周産期医療体制は、他の自治体に比べて立ち遅れている。母体・胎児の集中治療管理室は、02年度に設けた3床だけ。出生1万人当たりで見た新生児集中治療室は全国平均のほぼ半数にとどまる。

 また、新生児集中治療室を出た新生児を受け入れる後方病床数は全国ワースト1の6床しかなく、ただでさえ少ない新生児集中治療室の回転率を下げている。結局、母体の緊急搬送の約4割を平均約1時間をかけ、県外に運んでいた。【今西拓人、中村敦茂】

 ◆診療相互援助システム先進地・大阪

 ◇母体の死亡率、20年で激減

 大阪府では、緊急かつ高度な産科救急と母体搬送に対応する独自の「産婦人科診療相互援助システム(OGCS)」を運用、約20年で、母体の死亡率を激減させるなど、効果を上げている。

 大阪府ではかつて、母体の死亡率が高かった。80年には出産10万件当たり27件に上り、全国平均の19・5件より悪かった。これを改善するため、大阪産婦人科医会が中心となって設立したのが同システムで、87年から運用を始めた。当初34病院だったが、現在は43病院に増え、新生児集中治療室の空床状況などの情報も共有。母体の死亡率は著しく改善し、04年は出産10万件当たり、母体死亡は2・4件まで減った。

 課題もある。システムの周知が進むと共に、システムの利用率が伸び、救急搬送の取扱件数が年々、増加。96年に963件だったのが、05年は1779件にまで増えた。このため、満床になる病院が多くなり、母体搬送の依頼に十分に応えられなくなってきている。リスクの高い産科救急に余裕を持って対応するためにも、産科医や病床数の増加が必要だという指摘がある。【河内敏康】

 ◆国が目指す体制とは

 ◇総合周産期母子医療センター、未整備8県「来年度中に運用開始」

 「周産期」とは、妊娠22週から生後7日未満までの期間を指す。妊娠に伴い母体が病気になったり、早産で低体重児が生まれるなどの危険性があり、周産期では緊急事態に備え、医療体制を整備する必要がある。国が目指す周産期医療体制はどんなものなのか。

 未熟児の増加などに伴い、国は96年、周産期医療システムの構築に乗り出した。整備指針で、総合周産期母子医療センターの整備や、周産期医療従事者の研修などを盛り込んだ。04年の「子ども・子育て応援プラン」では、同センターを中心とした周産期医療ネットワークの整備を、08年3月までに完了するよう全都道府県に求めた。

 総合周産期母子医療センターは、母体・胎児の集中治療管理室(MFICU)6床以上、新生児集中治療室(NICU)9床以上を備えた施設。奈良県のほか、秋田、山形、岐阜、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島の7県が現在も未整備だ。このうち奈良など4県で国の方針を満たす計画が策定されていない。

 同センターの整備には数億円程度かかるが、リスクの高い母体や胎児の救命には不可欠な施設だ。この問題について柳沢伯夫・厚生労働相は先月27日の衆院厚生労働委員会で、「適切に救急搬送されなかったことは明らか」と答弁。そのうえで「助言、指導や、補助金支給で(総合周産期母子医療センターの)早期構築を促す。08年3月までに実施し、動かす」と述べ、来年度中に運用を始めることを明言した。【河内敏康】

 ◆反響

 ◇明らかな人災。人ごとではない/出産には危険が伴う

 ◇過熱報道で“萎縮防衛医療”が始まっている

 一連の報道を受け読者からの反響は100件を超えた=写真。周産期医療の早急な体制整備を求める声や、問題の背景に疲弊した医療現場の現状があるとの指摘があった。一方で、報道に対する批判も4割近くあった。

 緊急搬送体制の不備に対する不安の声は多い。メールで感想を寄せた女性は「今回の問題は明らかな人災。奈良での出産を考えていたので人ごとではない。実態を明らかにして、対策を立ててほしい」と訴えた。

 また、奈良県に住む40代の主婦は「本当に痛ましいこと。県外に搬送されることのないよう奈良の病院は態勢を考えて」と注文を付けた。

 出産には危険が伴うことを報道するべきだという声もあった。福岡県の医師は「出産は危険な側面をもち、100%の安全を保証できるものではない」。別の医師は「合併症を併発した分娩では(出産は)命がけの仕事だ。しかし、患者と家族は、元気に赤ちゃんが生まれ、母親も健康に退院できるのが当たり前と考えている」と訴える。

 一方、報道への批判も。ある読者は「人手不足で過酷な勤務が続く中、こまやかなケアができないのが日本の産科医療の現状。力を出し切っても結果が悪ければ犯罪者として糾弾されるから医学生が少なくなる」と指摘。米国在住の外科医は「司法判断、マスコミの過熱報道のため、医師は一か八かで頑張って患者を助けようということができなくなっている。“萎縮(いしゅく)防衛医療”は既に始まっている」と記した。

 ◆一つの病院では完結しない----出産ライター・河合蘭さん

 今回の問題について、出産ライターの河合蘭さんに聞いた。

    ×

 お産は、一般の病院では対応できないことが何の前触れもなく起こる。しかし、その怖さは、なかなか現場の医師ら以外には伝わらず、「安全」と高をくくる行政と温度差が生じているのではないか。

 奈良県が、緊急で高度な治療を要する母体の約4割を県外搬送していた現状は深刻だと思う。周産期医療体制の整った大阪府に頼っていたのだろう。東京と隣県との間でも同様の関係がみられるが、最近は各県でも総合周産期母子医療センターが整備され、改善に向かって努力がなされている。高齢出産の増加などでこれからハイリスク出産は増えると考えられるし、県内の体制整備は急務だ。

 周産期医療は一つの病院では完結せず、地域で支える必要がある。大淀病院のように、総合病院でも麻酔医が常勤でなく、すぐに手術が出来ない病院も珍しくない。だからこそ、ここと定めたセンターに、迅速に送れる仕組みを整えることが求められている。【聞き手・中村敦茂】

 ◆医師助ける体制改善を願う----青木絵美(奈良支局)

 「緊急かつ高度な治療が可能な病院に搬送するシステムが機能しない現状を、行政も医師も私たちも直視すべきだ」。私は、10月26日朝刊「記者の目」でそう訴えた。これに対し「記事は医師、医療機関を悪者に仕立てている」という意見が寄せられた。だが私を含め担当記者は当初から、医師1人の責任で終わる問題ではないと考えてきた。

 待合室が患者であふれ、妊婦1人の検査、診察が2時間以上かかる現実を、奈良県内の病院で目の当たりにした。休みなく診察室と検査室を動き回る医師には、頭の下がる思いもした。お産に絶対の安全はない。だからこそ、万一の場合に備えた体制づくりは必要だと思った。それが現場の医師の助けにもなるからだ。

 県は高リスクの妊婦搬送のあり方を議論する検討会の設置方針を明らかにした。現場の医師の参加も求めており、双方が意見を出し、体制の改善が進むことを願う。

参考
10月26日毎日新聞・朝刊「記者の目」

記者の目:「次の実香さん」出さぬように=青木絵美(奈良支局)

 ◇「人と予算」伴った対策を--医師だけを問責するな
 奈良県大淀町立大淀病院で今年8月8日、分娩(ぶんべん)中に意識不明になった高崎実香さん(32)が、19病院から搬送を断られた後、大阪府吹田市の国立循環器病センターで男児を出産し、8日後に亡くなった。私は取材を通じ、出産前後の医療システムについて考えさせられた。「財政難」を理由にその整備を怠ってきた奈良県と、深刻な医師不足で激務を強いられている医療現場双方が、「次の実香さん」を出さないよう、今こそ「人と予算」の伴った対策をとるべきだと言いたい。
 取材は8月中旬、高崎さん一家の所在も分からない中で始まった。産科担当医は取材拒否。容体の変化などを大淀病院事務局長に尋ねても、「医師から聞いていない。確認できない」。満床を理由に受け入れを断った県立医科大学付属病院(同県橿原市)も個人情報を盾に「一切答えられない」の一点張りだった。
 搬送先探しが難航した背景は根深い。取材を進めると、緊急かつ危険な妊婦を処置できる「総合周産期母子医療センター」は8県(秋田、山形、岐阜、奈良、佐賀、宮崎、長崎、鹿児島)で未整備だった。危険な母体を大阪府などに送る奈良の県外依存は、ここ数年3~4人に1人の割合で推移する。県医務課の釈明は、「看護師不足や財政難がある」。ただ、新生児集中治療室(NICU)が40床あることを挙げ「この病床数は大都市を除いて多い」と、整備を急ぐ構えは感じられなかった。
 「だったら、なぜ妊婦は県外に送られたのか」「遺族はこの現実をどう思うか」。実香さんの遺族にたどり着けたのは10月だった。義父の憲治さん(52)は当初、「実香ちゃんの死を汚す結果にはしたくない」と、取材への不安を口にした。「県内の実態を改善させるよう継続的に取材する」と伝えると、憲治さんの話は5時間以上に及んだ。
 実香さんは頭痛を訴えた直後に意識不明に陥った。家族は脳の異状を疑い「CT(コンピューター断層撮影)を」と主治医にすがったが、分娩中にけいれんを起こす子癇(しかん)の判断は変わらず、搬送先探しが優先された。結局、死因は脳内出血。「担当の先生は、息子(実香さんの夫)も取り上げてくれた。『親子でお世話になれるな』と喜んでいた。病院の説明があったとき、事務局長に『誰のために働いてる』と聞いたら『町、病院のため』と答えたよ」。憲治さんの言葉には、信頼する医師の下で起きた事態へのやりきれなさがあふれていた。 記者の目:「次の実香さん」出さぬように=青木絵美(奈良支局)

 ◇「人と予算」伴った対策を--医師だけを問責するな
 奈良県大淀町立大淀病院で今年8月8日、分娩(ぶんべん)中に意識不明になった高崎実香さん(32)が、19病院から搬送を断られた後、大阪府吹田市の国立循環器病センターで男児を出産し、8日後に亡くなった。私は取材を通じ、出産前後の医療システムについて考えさせられた。「財政難」を理由にその整備を怠ってきた奈良県と、深刻な医師不足で激務を強いられている医療現場双方が、「次の実香さん」を出さないよう、今こそ「人と予算」の伴った対策をとるべきだと言いたい。
 取材は8月中旬、高崎さん一家の所在も分からない中で始まった。産科担当医は取材拒否。容体の変化などを大淀病院事務局長に尋ねても、「医師から聞いていない。確認できない」。満床を理由に受け入れを断った県立医科大学付属病院(同県橿原市)も個人情報を盾に「一切答えられない」の一点張りだった。
 搬送先探しが難航した背景は根深い。取材を進めると、緊急かつ危険な妊婦を処置できる「総合周産期母子医療センター」は8県(秋田、山形、岐阜、奈良、佐賀、宮崎、長崎、鹿児島)で未整備だった。危険な母体を大阪府などに送る奈良の県外依存は、ここ数年3~4人に1人の割合で推移する。県医務課の釈明は、「看護師不足や財政難がある」。ただ、新生児集中治療室(NICU)が40床あることを挙げ「この病床数は大都市を除いて多い」と、整備を急ぐ構えは感じられなかった。
 「だったら、なぜ妊婦は県外に送られたのか」「遺族はこの現実をどう思うか」。実香さんの遺族にたどり着けたのは10月だった。義父の憲治さん(52)は当初、「実香ちゃんの死を汚す結果にはしたくない」と、取材への不安を口にした。「県内の実態を改善させるよう継続的に取材する」と伝えると、憲治さんの話は5時間以上に及んだ。
 実香さんは頭痛を訴えた直後に意識不明に陥った。家族は脳の異状を疑い「CT(コンピューター断層撮影)を」と主治医にすがったが、分娩中にけいれんを起こす子癇(しかん)の判断は変わらず、搬送先探しが優先された。結局、死因は脳内出血。「担当の先生は、息子(実香さんの夫)も取り上げてくれた。『親子でお世話になれるな』と喜んでいた。病院の説明があったとき、事務局長に『誰のために働いてる』と聞いたら『町、病院のため』と答えたよ」。憲治さんの言葉には、信頼する医師の下で起きた事態へのやりきれなさがあふれていた。
 その取材から3日後、実香さんの実父母、夫の晋輔さん(24)にも話を聞いた。「脳内出血の処置を受けているのに、母乳がたまっているのか胸が張ってね……」。意識のない中、実香さんは母であろうとしたのだ。その後、遺影の実香さんと、生後2カ月で愛くるしい笑顔の長男奏太(そうた)ちゃんに対面した。一家は考えた末、取材が殺到するのを「覚悟してます」と、実名と写真の掲載に同意した。
 報道以降、多数のファクスやメールが届いている。「医師の能力不足が事態を招いた印象を与え、一方的だ。医療現場の荒廃を助長する」という医師の声も少なくない。だが、記事化が必要だと思った一番の理由は、医師個人を問題にするのではなく、緊急かつ高度な治療が可能な病院に搬送するシステムが機能しない現状を、行政も医師も、そして私たちも直視すべきだと思ったからだ。居住地域によって、助かる命と失われる命があってはならない。
 NICUに9床を持つ県立奈良病院(奈良市)では、緊急処置の必要な妊婦受け入れに対応できるよう、正常分娩の妊婦を開業医に移す自助努力を重ねてきた。また、今回の問題を受け、県医師会の産婦人科医会も母体を産科以外で受け入れるなどの対策を打ち出した。医師の研修制度改正や産科医不足から、県内でも過去2年間で3病院が分娩を取りやめるなど影響は深刻だが、可能な限り、知恵を絞らねばならないと思う。
 一方、県は医師会の対策をなぞるように、県内の民間2病院へ搬送受け入れを要請。だが、これは本来のセンター整備の遅れを補うに過ぎない。現時点で県は、人員確保を含めた体制作りを09年度中としているが、前倒しすることも検討すべきだろう。
 初めて大淀病院に行った時、私は待合室で2カ月先まで分娩の予約が埋まっているとの張り紙を見た。「地域の妊婦がこの病院と医師を信じ、通っている」。憲治さんは「やがては実香ちゃんの死に意味があったと思いたい」と訴えた。失われた実香さんの命を見つめ、医療従事者、行政は同じ過ちを繰り返してはならない。
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 「記者の目」へのご意見は〒100-8051 毎日新聞「記者の目」係へ。メールアドレスkishanome@mbx.mainichi.co.jp

[毎日新聞 ]

投稿者 akiuchi : 12:09 PM

November 03, 2006

「日医ニュース」11月5日号 朝日新聞論説委員 梶本章

「開業医の報酬を下げ、病院勤務医の報酬を上げることを提案しています。」ということで一部の医師から反発が出ているが内科開業医に美味しい診療報酬体系は見直さなければならないだろう。
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日本医師会発行の「日医ニュース」11月5日号
オピニオンのコーナー
朝日新聞論説委員 梶本章
京大経済卒

NO.36
日医 ピンチはチャンス
梶本 章(朝日新聞論説委員)
朝日新聞論説委員(担当は社会保障と政治).昭和48年京大経済学部卒,同年朝日新聞社入社.以来,週刊朝日副編集長,朝日新聞政治部政治面編集長などを歴任し,平成15 年より現職.


「赤ひげ」なのか.それとも「欲張りムラの村長」なのか…….

医師の評価をめぐっては,いつも相反する二つの見方が交錯する.しかし,「赤ひげ」は,こんな医師がいればいいのに,という理想像.現実はどうかと問われれば,「欲張りム ラの村長」と答える人が多いに違いない.
これを裏付けるように,橘木俊詔京大教授らは『日本のお金持ち研究』で,「医師は日本において経営者層とともに高所得者の代表選手」と分析する.
それだけではない.国民の多くは日本医師会を自民党とつながる圧力団体の代表選手と見ている.確かに昨年の日本医師連盟の政治献金額は約三億九千万円.日本薬剤師連盟と並 んで突出している.
こんな身近なデータからも,お医者さんは「欲張りムラの村長」.日医は「自民党とつながった圧力団体」という印象をもたれても仕方がないのではないか.
しかし,最近の医療制度改革をめぐる動きを見れば,日医の活動がうまくいっているとはとても思えない.診療報酬一つとっても二〇〇二年からマイナス改定が続く.その診療報 酬を決める中医協は,日医の発言権が大きく狭められた.「日医の黄昏」と言ってもいい.
だが,ピンチはチャンス.そういう厳しい冬の時代だからこそ,新たな再生の芽も出ていると言いたい.

低医療費政策のなれの果て

それにしても,最近の医療費の抑制はすさまじい.小泉前首相が進めた医療の構造改革をざっと振り返って見ると―
二〇〇二年医療制度改革=(1)サラリーマンの医療費の患者負担を二割から三割へ引き上げる(2)サラリーマンの保険料をボーナスを含めた総報酬制とし,政管健保の保険料 を引き上げる(3)診療報酬の本体を初めてマイナス一・三%引き下げる.
二〇〇六年医療制度改革=(1)現役並みの所得がある高齢者の患者負担を二割から三割に引き上げる(2)新しい高齢者医療制度を創設し,全国一本で運営される政管健保など 医療保険を県単位に再編する(3)診療報酬の本体をマイナス一・三六%引き下げ,医療費を削減するため療養病床の再編を進める.
小泉前首相は一連の改革を「三方一両損」と言い表した.患者も,保険者も,医療提供者も等しく痛みを分かち合うと言うことだ.そこに貫くのは,ありとあらゆる手を尽くして 医療費を削減するという発想だ.
私は,この改革を,厳しいがやむを得ないものと受け止めている.
経済の低迷が続き,もう,かつての高度成長は期待できない.日本の人口が減り始め,高齢化率は二〇%を超えた.日本の財政は国と地方を合わせ約八百兆円の借金を抱え,破綻 寸前だからだ.
いつでも,どこでも,だれでも,病気になったら必要な医療を受けられる.国民皆保険を守るためには,医療のムダをなくし,必要な費用は負担し,高齢化に対応した仕組みに改 めていかねばなるまい.
だが,一連の低医療費政策の副作用も生じてきた.英国ではサッチャー政権による医療費抑制の結果,深刻な待機者問題が生じた.ブレア政権は,逆に医療費の投入に転じたが, 一旦壊れた医療供給体制は簡単には元に戻らないと報告されている.最近,全国で問題になっている医師不足は,英国の出来事と同様,日本の医療提供体制のほころびを示してい るのではないだろうか.
政府は,「骨太の方針二〇〇六」で,基礎的財政収支(プライマリーバランス)を二〇一一年に黒字化するため,今後も歳出削減を続け,社会保障についても一兆六千億円の削減 を求めるという.つまり,小泉改革の五年間と,ほぼ同額の歳出削減をまた続けろと言うのだ.
本当に,今までと同じペースで医療費を削っていけるのか.必要な医療サービスを,安心して利用できるのか.こと,ここに至って,国民は大きな選択の時を迎えている.

今こそ日医が主導権を発揮する時

子どもを産もうと思っても産科医がいない.急病の子どもを診てくれる小児科医がいない.地域の拠点病院では医師が激減し,診療が滞っているところも出ている.本当に地域の 医師不足は深刻である.
なぜ,こんなことになったのか.新しい臨床研修制度の導入で大学の医局にあった医師の供給機能が壊れた,フルタイムで働けない女性医師が増えた,医師が患者を診る時間が長 くなった―など,いろいろな理由があるが,低医療費政策により,病院の余裕がなくなったことが大きいのではないか.
いくら国民皆保険制度の仕組みがあっても,医師がいなければ絵に描いた餅だ.患者やその家族にとっては,生命にかかわる深刻な問題だ.ここは考え得る限りの手立てを講じな ければいけない.例えば―
医学部の定員を増やす.地方の医学部は地元枠を拡大する=即効性はないが,中期的には医師の配置に余裕を持たせることができる.
産科,小児科,へき地医療などの診療報酬を上げる=経済的なインセンティブを与え,不足している分野へ医師の参入を図る.
医療費を開業医より病院に手厚く配分する=過酷な勤務に耐えかねた病院の医師が開業医へ流出するのを止める.
どこでも好きなところで開業できるという“自由開業制”や,好きな診療科目を選べるという“自由標榜制”を見直す=こうすることで強制的に必要な医師が確保できる.
さまざまな医師確保策が,厚生労働省を中心に,これから打ち出されるに違いない.日本の医療の財政面は診療報酬体系で,箸の上げ下げまで規制されているが,提供体制は基本 的に医師の裁量に委ねられてきた.しかし,不足が深刻になれば,その分野への規制が強まることも予想される.
だが,こうした問題こそ,厚労省に頼るのではなく,日医が主導権を発揮するべきではないか.
日医が全面的にリーダーシップをとって,産科や小児科における医師不足を解消したり,へき地医療を充実させる手立てが本当に考えられないのだろうか.
医療費をもっと上げろ.このスローガンだけなら,日医の内部も割れることはあるまい.しかし,例えば,だれをへき地医療に派遣するのかを自分たちで決めるとなると,内部は 大揺れとなるに違いない.
しかし,それを乗り切ってプロ集団としての責任を果たすことこそ,「赤ひげ」への道に通じるのではないか.国民にそうした姿を見せれば,低医療費政策の転換を求める日医の 声も,共感を呼ぶのではないか.
まさに,ピンチはチャンスである.日医執行部の責任は誠に重いと思うのだが,やっぱり,これは無い物ねだりなのだろうか.ぜひとも奮起を期待したい.

(なお,本欄の感想などは広報課までお寄せください)
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投稿者 akiuchi : 09:44 PM

September 28, 2006

横浜・堀病院事件 県警、異例の反論

9月のメルマガで医療事故に警察・検察が介入することが如何に不合理かということを取り上げた。日本の医療崩壊は着実に進行している。

■虎の門病院泌尿器科部長の小松秀樹「慈恵医大青戸病院事件-医療の構造と実践的倫理-」
わが国の警察、検察は犯罪捜査と刑事責任追及はすべてに優先すると考えているらしい。そのために事故が多発しようが、医療が混乱しようが、気にする様子はうかがえない。警察、検察を抑えるべき権威はわが国には存在しないようにみえる。(中略)警察は理解力に問題があるためか、科学にも敬意を払わない。見込み捜査と自白強要という、昔ながらの犯罪捜査が、科学的調査を必要とする場面に土足で踏み込んでいる。警察、検察の活動について、チェック機構が働いているように思えない。チェックのない権力がどのようなものか、歴史を紐解くまでもなく、現在の世界を観察すれば十分に理解できる。」(p76)プルプル通信メルマガ版 第42号 *9月号*(Vol.19 No.16)2006年9月20日発行

横浜・堀病院事件 県警、異例の反論 医会などの強制捜査批判に

 横浜市瀬谷区の堀病院で無資格の看護師らが助産行為をしていたとされる事件で、日本産婦人科医会などが神奈川県警の強制捜査を批判していることについて、井上美昭・県警本部長は6日の定例記者会見で、「不当と言われるいわれはない。関係機関の法的な解釈を事前に照会したうえ、厳正に捜査している」と異例の反論をした。
 県警は8月24日、保健師助産師看護師法違反の疑いで堀病院を家宅捜索。日本産婦人科医会と日本産科婦人科学会は9月1日に見解を公表し、「大がかりな捜査は極めて不当。産婦人科医療の現場に深刻な打撃を与えた」と批判。県産科婦人科医会も「堀病院を全面的に支援する」と表明している。

[読売新聞 ]2006年9月7日(木)

「無資格助産」捜査批判に反論 県警本部長「法的解釈踏まえ慎重捜査」=神奈川

 横浜市瀬谷区の堀病院への捜査批判が医療関係者の間からあがっていることに、井上美昭・県警本部長が6日、正面から反論した。捜査中の個別の事件について、県警幹部が反論するのは異例。「不当」などと言われる筋合いではないという立場を、明確にした。
 ◆県警本部長との一問一答
 井上県警本部長の一問一答は次の通り。
 --堀病院への家宅捜索について、日本産婦人科医会など医師側から「捜査が不当」という声があるが。
 法的な手続きに従って、厳正に捜査を進めていきたい。「不当」という指摘は、いかがかなあという感じは持っている。ただ捜査中なので、どこがどうなんだ、というのは控えたい。感想としては、そういうふうに言われるいわれはないと思っている。
 --法律解釈に議論がある時点での家宅捜索に反発があるが。
 被害の申告がなされ、当然、捜査をする責務がある。こういう捜査をする場合、関係機関の法的な解釈ということについても、事前に照会している。そういうことを踏まえ、非常に慎重に捜査をしていた。
 --結果として医療界に大きな影響を及ぼしているが。
 関係機関、行政、医師会が事案を踏まえ、議論して、対策を取ることが大事ではないか。県警が投げかけた事案を受け止めていただければ、ありがたい。むしろ今回の事案を経験し、国民にとっていい方向に関係機関が進めていくのが、大事なこと。粛々と捜査を進めていく。

[読売新聞 ]2006年9月7日(木)

投稿者 akiuchi : 03:46 PM

September 27, 2006

山路・白梅学園大教授に聞く

今回の横浜内診問題に関しては毎日新聞の明らかな暴走報道ぶりが目立っているがこの山路という元毎日新聞論説委員が厚生労働省検討会座長を務めているということでなぞが一気に解けた気がした。毎日の報道姿勢は今後とも厳しく追及されることになるだろう。「山路教授は産道に指を入れてお産の進行状況を見る「内診」について「高度な医療行為で、専門家である助産師と医師以外に認めるべきではない」と主張」しているようだが果たしてその根拠は何?「内診は微妙な判断を要する医療行為で、医師と助産師以外に認めるべきではないとの意見が大多数だった。」という大多数というのは検討会の構成メンバー選びの段階で既に多数派は決まっているということじゃないのかな?医療に素人の裁判官に医療訴訟を任せる以上に政治的背景を持つ人間をこの手の検討会座長に据える厚労省の対応にはじめから結論ありきの姿勢が伺える。これでは現場はたまったものじゃない。
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横浜・病院無資格助産行為:現場の待遇改善を 山路・白梅学園大教授に聞く /神奈川 - 毎日新聞 (1280文字)
 2006年8月29日(火)

 ◇厚生労働省検討会座長・山路憲夫教授(白梅学園大)に聞く
 横浜市瀬谷区の産婦人科病院「堀病院」(堀健一院長)による保健師助産師看護師法違反(無資格助産)事件で、同法のあり方に関する厚生労働省の検討会座長を務めた山路憲夫・白梅学園大教授(59)が28日、毎日新聞のインタビューに応じた。山路教授は産道に指を入れてお産の進行状況を見る「内診」について「高度な医療行為で、専門家である助産師と医師以外に認めるべきではない」と主張。「助産師は不足と言うほどではない。産科現場での待遇改善が急務」と指摘した。【伊藤直孝、写真も】
 ◇証拠があるなら立件当然
 ――昨年4~11月に検討会で、看護師の内診についてどのような議論が交わされたのか。
 山路教授 日本産婦人科医会は助産師の人手不足を理由に、看護師に分娩(ぶんべん)第1期(陣痛開始後、子宮口全開まで)の内診を認めてほしいと陳情していた。02、04年に厚労省は「認められない」と通知したが、これも含め保助看法の課題を話し合おうと検討会が開かれた。取りまとめは「両論併記」と言われたが、内診は微妙な判断を要する医療行為で、医師と助産師以外に認めるべきではないとの意見が大多数だった。
 ――助産師は不足しているのか。
 山路教授 厚労省の報告書をみると、10年は助産師の需要2万9600人に対し、供給は2万8700人となる見通し。日本助産師会は稼働していない人も含め助産師が5万5000いると試算しており、看護師として働いている助産師もかなりいるはずだ。不足というほどではない。
 一方、滋賀県は昨年3月、助産師の勤務実態について、産科診療所は病院に比べ労働条件が悪く、パートも多いとの報告をまとめた。そもそも産科診療所が正規の助産師募集をしていないから、助産師が根付かない、常勤助産師がいない産科診療所もたくさんある。厚労省は産科診療所に助産師配置を義務付ける立法措置が必要ではないか。
 ――産科は経営が苦しいので、助産師の正規雇用が難しいのでは。
 山路教授 中央社会保険医療協議会の実態調査をみると、産科は相対的には厳しいが、経営が成り立たず、診療報酬を上げなければいけないほどの実態はない。結局、人件費を削るために助産師を正規雇用していないから、看護師に内診を認めてほしい、と主張しているように見える。安易な考えだと思う。
 ――事件によって産科医の分娩離れが加速するのでは。
 山路教授 看護師の助産行為は現行法上明らかに違法で、証拠があるなら警察が立件するのは当然だ。まして分娩第2期の准看護師の内診が事実とすれば、検討会の議論(分娩第1期)以前の問題だ。これまで半ば公然とやっていた産科医側は反省するきっかけとしてほしい。
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 ■人物略歴
 ◇やまじ・のりお
 1946年三重県生まれ。慶応大卒業後、70年毎日新聞社入社。論説委員などを経て03年4月から白梅学園短大教授(社会保障論)。昨年4月から現職。著書に「医療保険がつぶれる」(法研)など。

[毎日新聞 ]


投稿者 akiuchi : 03:49 AM

September 25, 2006

「NNNドキュメント」消える産声

2006年9月24日(日)/55分枠
消える産声   産科病棟で何が起きているのか(仮)制作=中京テレビ
    産科病棟の閉鎖が加速している。中京テレビの調査では、この5年間で東海3県の地域総合病院(大学から医師を派遣されている所)から21の産科病棟が消えた。若手医師が産科を選ばない理由は、これまで「勤務環境が厳しい」「医療訴訟を受ける率が高い」などだった。しかし事態はさらに深刻化した。2年前から、大学を卒業した医師が自由に病院を選び就職できるようになり、大学(医局)が地域の病院に計画的に医師を派遣するシステムが崩壊したのだ。更に今年2月、福島県立病院の産科医が逮捕・起訴されたことも打撃を加えた。
ナレーター:平田 満
=再放送について= CSのニュース専門チャンネル「日テレNEWS24」にて放送

投稿者 akiuchi : 07:52 AM

NHK 【日本の、これから】 ~医療~安心できますか? (2006/10/14 放送)

NHK 【日本の、これから】
 ~医療~安心できますか? (2006/10/14 放送)
http://www.nhk.or.jp/korekara/

国民皆保険制度のもと、いつでも・どこでも・だれでも安心して医療を受けられるはずだった日本の医療。それが今、ほころび始めています。

深刻な医師不足。医者がいないため、小児科や産婦人科が閉鎖され安心して子供を産めない地域があります。救急病院を辞める病院も多く、患者がたらい回しにされるケースも後を絶ちません。
一方、病院の窓口負担の重さや健康保険料の負担に耐えきれず、医療を受けられない人たちも生まれています。高齢化によって医療費の増大は避けられません。しかし、国の財政が逼迫するなか公的医療サービスは切り下げざるを得ないという議論もあります。
安心して医療を受けられるようにするにはどうしたらいいのでしょうか?

番組では、私たちの健康、そして命を守る日本の医療の「これから」を徹底討論します。

投稿者 akiuchi : 07:45 AM